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第8章 空白の時間


探偵社やポートマフィアの様子をちらりと見てきたのは勿論、そこから喫茶店に向かってみると、いつものように営業しているのを発見した。

しかし外の騒動が酷かったためか商品は用意出来ていないみたいで、ショーケースにはお菓子類は何も置かれていなかった。

まあ二人の元気そうな姿が見れただけでもいいやと、結局入る事はせずに、トボトボと行く宛もなく歩いていく。

『………一目だけでも、見たかったな』

ポートマフィアの拠点の中には沢山の死体袋が並べられていて、忙しなくその人達の手続きが行われ、私自身まだ戻るわけにもいかなかったために中には入れなかった。

見たかった、なんて言いつつも、どこかに見なくて良かっただなんてほっとしてる自分がいる。

もし出会ってたとしたら、私はきっと、どんな顔をすればいいのか分からなかっただろうから。
組合の拠点に滞在する意思を、貫き通せなくなってしまうだろうから。

扉を使って渡っていってもよかったのだが、なんだか何もやる気になれず、まだちらほらと人のいる通りを一人で歩いていく。
山小屋の方に行くのであれば、別にわざわざ扉を創らなくてもいいだろう。

なんて考えて、歩いていたのがいけなかったのだろうか。
誰かにジロジロと見られている気がする。

こんな格好をしているから仕方ない事であるとは思うのだけれど、そういった類のものじゃあない。
もっと、嫌悪感が漂ってくるような…

「そこのお嬢さん、一人で歩いてどこいくの……って、あれ?」

スタスタ歩いていっていれば、何やら拍子抜けた反応をしている人がいた。
まあ関係ないか、と思って道を曲がり、裏路地の方へ入っていく。

「ちょっとちょっと、君の事なんだけど!?なんで無視して行っちゃうの!?」

しかし、慌ててこちらに来たのか、道に入り込んだあたりでその人から肩を掴まれた。

『へ…?私?』

「そうそう、君だよ!何?天然なの?」

『天然じゃないです。というか、さっき誰かに話しかけてたじゃないですか?その人のところに行った方がいいんじゃ…』

「だから君に話しかけてたんだってば…分かるかな?君みたいな子を見つけるとさ、意地でも自分のものにしたくなっちゃうんだよねえ、俺みたいな奴らって」

男性の声と共にジャリ、と足音が聴こえて、みれば周りを囲まれていた。
ああ…こういう人達か、また面倒な人達に出会った
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