第2章 暗闇の中で
当時、目視出来てる範囲内での瞬間移動は使う事が出来た。
しかしここは海の中。
冷たいし息も出来ないし、何よりも水の中だ。
水の中に全身が浸かっている状態によってパニックに陥った私は能力を使う事なんて出来るわけもなくて。
冷たくて段々と身体の感覚が麻痺していく中、意識を失う事しか出来なかった。
それからどれくらい時間が経ったのだろうか、目を開くと牢屋のような場所に拘束して監禁されていた。
『……何、これ』
両手足と首に付けられた物が鎖付きの枷である事を確認し、能力で脱出を試みたが、私を拘束した人物の計略だろうか
能力を発動仕掛けた途端に、ゾワッと悪寒が走った。
そしてそれはただの嫌な予感などではなく、直後に身に染みて味わう事となる。
『…ぁ、ああ、っ……ぅあああ!!!!?』
恐らく両足の枷からであろうか。
電流が体に流されてきた。
『は、は…ぁ、……』
意識を失う事が出来ない、けれどもかなりの刺激が与えられた先程の電流。
やられた時は痛かっただけだが、それは徐々にとある恐怖を蘇らせていた。
『な、んで…この、感じは、っ』
途端、牢屋に響いた拍手の音と男の笑い声。
「ははは、お目覚めかな?お嬢さん…白石 蝶ちゃん、だっけか?」
目の前からやって来たその日本人離れした顔付きの人物は、愉快そうに、そして品定めするかのような目で私を見て口角を上げる。
『誰…』
「名乗るほどの者じゃあない。まあ、君みたいな将来的にもかなり期待させられる女の子からの質問にはなるべく答えたいところだが……君を誘拐した人物の仲間とだけ言っておこう。」
『何が目的でこんな事……それにこの枷は何、?』
この電流の感じ、聞かなくたって覚えてる。
「分からなかったかい?ならもう一度…今度は意図的に流してあげるよ。」
『!…や、やだっ……やめっ……〜〜〜〜〜っっああぁ!!!!!』
身体中が、別の生き物かのようにしてガクガク痙攣する。
力も入らず座りこもうとするも、両手に繋がれる鎖がそれを許さない。
「ごめんごめん、でもこれでだいたい察しはついたろう?我々が君を攫ったのは、ある人物から依頼があったからさ。」
男の声は、身体の痙攣によってガチャガチャと鳴り響く鎖によって聞き取りにくかったが、そこと名前だけは聞き取れた。
「_____」