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第8章 空白の時間


少し時間を遡ると、横浜の地上は渾沌としていた。

「交通網を死守しろ!襲ってくる奴は撃て!このままだとうちが商売する場所まで灰になっちまう!首領の指示だ、死ぬ気で守れ!!」

自身の愛しい少女の事もあったが、それを気にする余裕もなくなるほどの状況が出来てしまった。
Qの異能が無差別に大量に発動され、自分の部下も何人も死んでいる。

まさかQまでもが組合の手の内にあったとは…

呪いが解除されるには、あの人形を太宰に触れさせなければならない…が、ただでさえ太宰に会うだなんてものは容易ではない上に、肝心のその人形が手元にない。

「クソッ、こういう時に蝶がいてくれたら…っ」

嫌でもそこに縋り付いちまう自分が情けねえ。
あいつなら、すぐにでも人形の元に飛ぶことが出来る。
あいつなら、呪いを受けた人間を何とかすることだって出来る。

あいつなら、俺の血の供給さえあれば、何でも守る事が出来る。

「蝶に何かあったんすか!?こんな時にあいつが幹部の元に来ねえなんて普通じゃねえとは薄々思ってましたが…っ!」

立原が銃を撃ちながら話しかけてくる。
しまった、聴こえてやがったか。

「話すつもりはなかったが、仕方ねえ!聞いて驚いても攻撃は止めんなよ!!……っ、あいつは今、組合の拠点に連れて行かれてる」

「「「!!!」」」

近くにいた何人かにも聴こえていたのか、反応を示す奴らがいる。

「だが心配ねえ!首領ともう手は考えてある、とりあえず今はこの場を守りきれ!!」





暫くして呪いがどうやら解除されたようで、こちらを襲ってきていた奴らが大人しくなった。
それを見て攻撃を中止し、近くにまだいた樋口を呼び止める。

「樋口、取り敢えず負傷者の回収が最優先と指示はしたが…広津さん達が見当たらねえ。無いとは思うが万が一のことも考えて三人を探してきてくれ」

「分かりました、見つけ次第連絡します!」

「ああ、任せる」

空を見上げればスモークが充満しており、こんな事をする奴は太宰の木偶しか思い付かないため、結局はあいつの手柄かと一人舌打ちをする。

そして負傷したり死亡したりした部下達を拠点に回収するのを見送りながらいると、樋口から仕事用の端末に電話が入る。

「な、中原さん!発見したんですけどその、立原が…っ」

「立原がどうした!?とりあえず場所を教えろ!!」
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