第8章 空白の時間
流石に少し色が目立ち過ぎたので、ミニタイプの黒色の物に着替えさせてもらった。
キャミソールタイプのドレスにボレロを羽織り、まあ目立ちはするだろうけれど、どこかのパーティーにでも出席するのかなという程度に留められそうな格好にはなった。
「ふむ、中々いいな。だが、何故今回は髪をおろしたのだ?てっきり動きやすいからいつも上げているのかと思っていたんだが」
『知り合いに気付かれたくなかったんで。とりあえず手早く知り合いの生存確認だけしたら、すぐにでもジョンさん達の元に移動しますね』
「よろしく頼む。…ああ、そうだ。それともう一つ頼んでもいいか?」
私にもう一つ頼み事があるという事で、何ですか?と聞くと、これは本当に個人的なお願いらしく、できたらでいいのだがと前置きを入れられる。
「トウェイン君が買ってきてくれていたプディングがあるだろう。あれは中々に美味だったから、また購入してきてくれると助かる」
『……はい、そういう事なら。あれ、美味しいですからね。いくつあるか分かりませんけど、あったら買ってきますね!』
「あるだけ買ってきてくれ。君も食べるだろう」
フランシスさんが気に入ってくれたのが嬉しくて、それなら喫茶店の方には顔を出そうと決意して、扉を作る。
お金を直接フランシスさんに渡されたものの、流石に金銭感覚が少し鈍いのか多すぎたため殆どを無理矢理返し、必要な分だけ持たせてもらった。
『じゃあ、行ってきますね』
「…あ、あと渡した金で昼食と夕食も好きなものを食べてくるんだ。……ああ、だがそれを考えるとやはり金が少ないのでは…」
あれ、なんだろうこの溢れ出るデジャヴ感。
物凄く見覚えがあるぞこういう光景。
「ほら、やはり今の倍ほどは持っておくべきだ。途中で何かあってはいけないだろうし、突然何か必要になるやもしれん…疲れた時には交通費にも当てられる」
『い、いやあの、フランシスさん?今持たせてもらってる分だけでも多すぎるくらいでですね?』
「何を言っている、何かがあってからでは遅いんだぞ。ああ、そう考えると巷のろくでもない輩に君が襲われる危険性も」
『いやいや、私の方がどう考えても強いですからそれ。というかなんでそんなに慌てて…』
この心配症、間違いない。
「知らない輩に君が襲われては」
『行ってきますね』
絶対親バカ気質だこの人。
