第8章 空白の時間
ラヴクラフトさんの変わりすぎてるその性格や行動を聞き、とりあえず何も私は分からないために、はいと言うしか無かった。
『じゃ、じゃあラヴクラフトさん…?以外の人をここに送り届ければいいんですね?』
「頼む。負傷者がいればこの間会ったドクターのところに連れていってくれ。彼はいつでもモビーディックの中にいて、大抵は医務室で過ごしているはずだ」
『はい…あの、本当に首輪、付けないんです?』
少し間を置いてから、フランシスさんはまた、逃げないと言っていたろうと言う。
『でも、万が一の事を考えてつけてた方が安心なんじゃ…っ』
「そんな事を心の底から言うような人間が逃げるとはとても思えんよ…逃げたところでまたもう一度取り戻しに行くまでだ。元より君をここに置いているのは、地上で俺達の作戦による被害を被らせないのが目的だったしな」
『……はい、分かりました。それで、私はいつごろそこに行けばいいですか?』
私が聞くと同時に、フランシスさんのデスクの通信機が鳴った。
失礼、と言ってそれに出て、やはりそうかといった表情をして拠点に戻ってくれと連絡を入れ、通信を切ってしまった。
「飽和チャフとスモークによって射撃は不可能になった…それと、虎の少年の元に探偵社の異能力無効化の人物が現れたと。恐らく呪いは解除されただろう」
『太宰さんが…そう、ですか』
呪いと聞いて、今まで何も思ってはいなかったけれど、探偵社とポートマフィア以外に横浜で良くしてくれた人達を思い出す。
特に気になるのは喫茶店のあの二人や市警の方に、安吾さん。
呪いの被害を、受けてはいないだろうか。
呪いを受けた人々に、襲われてはいないだろうか。
少し顔を曇らせたのを見てか、フランシスさんがまた口を開く。
「なんなら今から行ってみればいいだろう。君は仲間の元からなら、能力があればいつだって逃げてくるだろうし、心配な部分もあるのだろう?確認するくらいならいい…暗くなるまでにジョン君の元に行ってくれればいいから」
『!いいんですか?』
「勿論だ。まあ、服が今本当に着られるくらいに乾いていないだろうから、少し目立つ格好になってしまうとは思うが…」
言われてすぐに、ドレスしかないぞと言われているのだと悟って苦笑いになる。
『か、貸りれるだけでもありがたいですよ…あはは』
知り合いに気づかれませんように。
