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第8章 空白の時間


ルーシーさんの元に繋がるよう創った扉を開いて出ると、案の定そこはアンの部屋。
ルーシーさんの異能力空間だった。

「!!…貴女、っ……なんでここに」

『ごめんなさいルーシーさん、敦さんの事ありがとう。…フランシスさんに連れてきてくれって頼まれたんです。酷いことは何もされないはずですから、心配はないですし…』

「……そう、どうせ貴女が頼んでくれたんでしょ?ありがとう。連れてって」

すぐに見抜かれて驚きはしたけれど、私の事をよく考えてくれる人なのだと改めて実感した。

『いえ…こちらこそ、色々ありがとうございます』

笑顔を浮かべて扉をもう一度開き、ルーシーさんに先に出てもらって自分も入る。

扉を消すことはしなかったため、そこはすぐにフランシスさんの執務室に繋がっており、覚悟を決めたようにルーシーさんはフランシスさんの言葉を待つ。

「来たか、話はだいたい分かっている。ルーシー君、君への処罰だが…モビーディックの中で活動する時、出来るだけミス白石と共にいてもらう事にする。君の仕事は、これからはその子と共にいること……そうだな、友人にでもなってしまえばいい」

「『!!!』」

フランシスさんの言葉にまた私までもがびっくりして、ルーシーさんに至っては声も出せなくなるほどに驚いている。

「そ、んな事っ…どんな処罰でも受ける覚悟は出来てたんです!なのにどうしてっ…」

「俺の所有物の責任は俺にある。それに、君にとってもその子にとっても、君達二人がそういう関係になる事の方が望ましいと考えた」

それだけだ、と言ってフランシスさんはクルッと後ろを向く。

『え、っと……ありがとう、ございます…?』

「構わん、気にするな。君への償いのようなものだよこれは」

私が娘さんと歳が近かったからなのかと思っていた。
しかし私の事をちゃんと見て、それでそう判断してくれていた。

それが何よりも嬉しくて、しかし結局は同時に本を手に入れるための手段を一時的に逃させてしまって、申し訳なくなった。

『……あの、敦さんの力が必要なら、本のためならまた協力できる事も………』

「いい、気にするな。君に所属組織を裏切らせるような真似はさせん。本など俺のやり方で手に入れてみせるさ…ではミス白石にはまだ話があるから、ルーシー君はもう部屋に戻ってくれ」

ルーシーさんは一礼して部屋を出ていった。
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