第8章 空白の時間
「何故君が謝る、直接我々の邪魔をしたわけではないだろう。それはいいから、何があったのかを…」
『…こんな事言える立場じゃないのは分かってるんですけど、今回の敦さんへの協力者に酷いことはしないであげてください。それなら、私も話せます』
真剣な目を向けると、フランシスさんは元よりそんなつもりは無かったのか、すぐにああ、言ってくれと椅子に座る。
『今回敦さんが逃げたのは、恐らくもう察しはついているかと思いますが、組合構成員の一人の手助けがあったからです。恐らく手を拘束されてどこかに閉じ込められた敦さんが外に脱出する方法なんて、普通はまずありません…でも、ここには一人、空間系の異能力を持つ人がいますよね』
「空間系といったら君が…」
『私、首輪のせいで使えませんよ?ほら、考えてみてください。敦さんを脱出させるだけなら、自身の空間の出口をここの外壁につなげればいい』
そこまで言ってようやくフランシスさんは理解したのか…或いはそんな気はしていたが信じたくは無かったのか。
敦さんの協力者を思い浮かべて、手で頭を押さえた。
「ルーシー君か…ッ、何故彼女が……それにどうして、君がそれを予測出来る」
『あの人が敦さんと同じような境遇の出で立ちだって事は、以前戦った時に知ってましたから。それにあの人はすっごく優しい人ですし、私が何もしなくてもこうなる可能性は大きいなと』
「…俺の責任だ、責任も俺がとる。ただし彼女にはもうそういう事をさせてはならない……君が一緒にいてやってくれるか」
フランシスさんの提案には私の方が驚いて、すぐに口元が緩んで笑顔になった。
『はい、そういうことなら全然大丈夫です。良かった、フランシスさんがいい人で』
「俺の所有物はみな、等しく俺が守る義務がある。無下には扱えん…首輪の接続を切ろう、ルーシー君をここに連れてきてくれ」
言ってすぐに首輪に線を繋がれて、直接大型のコンピューターで操作される。
…首が弱いからわざわざこんな風にしてくれてるのかな。
「よし、とりあえずこれで電流は流れないだろうから、後は君の能力で外せばいい。後、今日はまだ君に頼み事があるから夜まで首輪はつけなくていい」
『!夜まで?それならまた夜に外せばいいんじゃ…』
「君は、逃げるつもりはないのだろう?」
『……はい、じゃあ…すぐ戻ります』
白い扉を創り出した。
