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第8章 空白の時間


『ぁ……ッぅ…、んんッ…』

涙でベトベトの顔のまま、もう随分と時間が経った。
何度も何度も期待したくもないのに身体は期待させられて、それでも結局気持ちよくなりきれなくて。

「……そろそろもうちょっと進めよっか」

『すす、め……ッ!?…ん〜ッ!!!!』

突然下着の脇から指が直接滑り込んできて、グチュリと音を立てながらそこを撫で始めた。

『ああっ、もう嫌なのッ!!やだぁ!!!』

「直接触ると更に濡れてるね、僕の手をそんないやらしい蜜でいっぱい濡らして…」

『ひ、ッぁ……違っ…!!んんんッ!!』

「何が違うの、イってないのにこんなにベッドまでベトベトにしてるのにさ」

耳元で低い声が響いて、それにまで感じてしまう。
こんなになるなんて知らなかったの、あの薬がこんなに辛いものだっただなんて…イかせてもらえなかったら、こんなに切なくなるものだっただなんて。

最早頭の中で考えられることは、早く楽になりたい…気持ちよくなりたい、ただそれだけ。

中也さんならイかせてくれるのに…気持ちよくして、くれるのに。

『……っ!?やだ、私何考えて…ッぁ、…っ!!!』

またピタリと手を止められて、今度は顔を覗き込まれる。

「へえ、まだ違うこと考えられるんだ」

『ち、がうのッ…中也さんはそんなのじゃ……ッ』

ピクリとトウェインさんが反応して、目を見開く。

「……蝶ちゃん、君、その反応…前に言ってた事も含めてやっと理解したよ。君、あの男と本当はどこまで進んでるんだい」

『!!…ッ、なんにも、進んでなんかないっ!!!』

ただでさえ考えないようにしていたところを鋭く突かれて、頭がちゃんと機能しない私は口を開いて喋り続ける。

「なんにも?でも中原中也じゃないととか言ってたじゃん…こういうとこまで進んでるんでしょ?」

『……ッ、でも中也さんの好きは私と違うの!!いくらくっついてもキスしても…こういう事、しても……あの人は私の事、そういう風になんて見てくれてなくって…っ』

本当なら、今頃自分からちゃんと告白をする予定だった。
玉砕したって引かれたって、私を見捨てないでいてくれるであろうあの人に…恋人にして下さいって。

「こういう事って…ああ、それで媚薬は知らなかったのに達する感覚とか感じる事とか覚えてたわけだね。……あの男と、最後までした事あるの?」
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