第8章 空白の時間
『……ッ、ぁ…と、トウェインさん…………これ、何っ?』
「やっぱり液体タイプは早いね…まあよく効くやつを用意したんだけど。うーん…そのまま言っちゃうと媚薬……催淫剤だよ」
『び、やく……?』
呼吸が段々と大きくなってきて、トウェインさんが私と少し距離をとる。
「あー、分かんないか…まあ、すぐ分かるようになるよ。相当辛くなるような事しちゃうけど、ごめんね」
ごめんねと私に謝って、トウェインさんは部屋の証明を薄暗くする。
そしてトウェインさんまでもが部屋の入口の方に行ってしまい、何故か行かないでと心の底から懇願するような気持ちが溢れ出してきた。
『トウェイン、さん…っ、行かないで……我慢、するから…一人にしないで…?』
「…ごめん、虎の子が起きたらまた来るから。それまで待ってて」
『やだ…やだよ、なんか嫌なのッ…これ怖い、からっ』
段々と火照り始めて感覚が鋭敏になってくるこの感覚…これ、知ってる。
私、あんなのに一人で耐えたくない。
中也さんって我儘言わないから…お願い、一人にしないで。
「ごめんね…でもそうなってもらう目的だったから。泣いても叫んでも、暫くのうちは誰も来ないようにしてあるからさ」
入口の扉を開いたトウェインさんに向かって涙を浮かべて懇願する。
『お願いっ…いてくれるだけでいいの!!だからッ…』
「…いても、蝶ちゃんの事楽にはしてあげられないよ?それどころか、もっともっと蝶ちゃんが辛くなるようなことするよ、僕」
『辛く…っ?……ッ!』
きた。
身体がゾクゾクするこの感じ。
肌が何かに擦れるだけで、身体を動かして生じた空気の流れを感じるだけで、身体中がビクビク強い刺激にさらされるこの感じ。
一度刺激が走るとそれで身体が跳ねて、また新たな刺激が走る。
永遠に途切れることのないこの感覚…
「そろそろ声抑えるのも辛くなってきたでしょ。やっぱり僕は出といた方が…」
『い、て……ッ、嫌なの、一人…っん、…!ぁ……置いてかれるの、やぁ…っ』
「…中原中也の代わりにしてくれていいって言ったのは僕だもんね。だからいるのはいいけど…今回、僕はあの男と違って優しく出来ないからね」
頭ももうふわふわしてきていて、ハァ、ハァと短い呼吸を繰り返す。
コクリと頷けばトウェインさんは扉を閉めて、再びこちらに戻って来てくれた。
