第8章 空白の時間
私が返すとみるみる内に顔をパアッと明るくさせていき、本当に嬉しそうな笑顔になる。
ちょっと可愛いかもとか思ってないからね、絶対ないから。
「やった!!数着あるけど物が物だから、明日から着てもらったらいいんだけど…」
こっち来て!と立ち上がって執務室を出るトウェインさんの後ろを遅れ気味に付いていく。
なんだこの人、そんなに嬉しいのか私に色々着せられるのが。
ボス、蝶ちゃんがいいって!と、失礼しますも抜きにフランシスさんの執務室に勢いよく入るトウェインさん。
「…トウェイン君、気持ちは分かるが、ミス白石が戸惑っているぞ」
あ、ノックしなかったのは別にいいんだ。
なんていうか、この人も苦労してるんだな。
「あ、そうだった!そこのカーテンだよね?」
「ああ。今見せるのか?」
カーテンだとか見せるだとか、なんだか少し緊張したような様子のトウェインさんを見ていて、こっちまで緊張してきた。
『カーテンって…え、トウェインさん何用意したの』
「正確に言うとボスの家にあったのを拝借してきたんだけどね〜…これ!」
カーテンが自動でゆっくり開いて、そこに現れたのは華やかな服…というか、衣装。
トウェインさんの言った通りそこには数着の衣装があって、全て普通の値段では買う事が出来ないようなブランド物ばかり。
それも…
『……聞いてない。服じゃなかったの?…………ドレスって』
そう、そこにあった華やかなブランド物の衣装…数着あると言われたそれは、全てが綺麗なドレスだった。
驚きすぎて声も普通に出せない。
けれど目の前にあるものは、どれも憧れを抱くような、これまでに着ることもなかったようなものばかり。
女の子の憧れを詰め込んだような、そんなもの。
「びっくりしちゃったかなやっぱり。どうせだったら着てみてほしいなーってボスに頼んで持ってきてもらったんだよ」
「サイズも丁度良さそうだな、どれも似合いそうだし持ってきて正解だった」
『これを…わざわざ?……私なんかが着て大丈夫なんですか…?』
心の底からポツリと漏れた声。
それに二人共キョトンとして、それからまたすぐに微笑んで返してくれる。
「僕が着てほしかっただけなんだってば、寧ろこっちがお願いしてるんだから!」
言われてまた衣装を見る。
どうやら私は、目の前の衣装に目も心も奪われてしまったようだ。