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第8章 空白の時間


「____って、……さい!!」

『……ッ、ん………』

誰かがそこにいる…?
寝惚けたような虚ろなような、そんな頭で認識する。

「起きなさいってば!!!」

『へ、っ?…あ、れ……ルーシーさん…?』

目を覚醒させた瞬間、身体に漂う倦怠感。
吹き出す冷や汗が止まらないのか、身体が寒さに震えている。
呼吸もなんだかし辛いし、頭も痛い。

そして右の掌が一番痛い、ジンジンする。

すぐそこにいたルーシーさんが焦ったように私の顔を覗き込んでいて、何故か酷く安心した自分がいた。

「ラヴクラフトが連れて帰ってきたって聞いて、トウェインと一緒だったんじゃないのかと思って問いただしに行ったら、暫く貴女に会わない方がいいだなんて言い始めるから気になって来てみたのよ」

『!トウェインさん…が……?』

「そうよ、やけに落ち込んでたみたいだから放ってきたけど…それにしても凄い魘されてたわよ?流石に見てられなくて起こしたけ…… ど……」

一人でトウェインさんと中也さんを撒いて逃げ出して、それでまたあれに捕まったのを思い出して、目の前のルーシーさんに抱きついた。

『ルーシーさん…ッ、もうあのひと、来ないっ?触手、もう来ないッ?』

「ど、どうしたのよ突然!?触手って、ラヴクラフトならもう地上の方に…」

『地上……、ルーシーさんごめんなさい………でももうちょっとだけ』

誰かといなくちゃ、怖いから。
一人じゃ寒くて耐えられないから。

「私はいいけど…貴女、それで今日夜にちゃんと眠れるの?」

『……眠たくない。寝たく、ない』

「でしょうね…あーこういう時になんでトウェインの奴があんなんなのよ全く…とりあえず、ご飯食べてお風呂にしましょ。私もまだだから、気分転換も兼ねて」

私をあやす様に背中をさするルーシーさんにコクリと頷く。
トウェインさんが落ち込んでるというのは気がかりだったけれど、今はあまり男の人と一緒にいたくない。

中也さんに知られてしまった。
中也さん以外の人に無理矢理されて、感じてた。
トウェインさんが私の事を考えてくれてなかったら、とっくにもっとおかしくなるまでされちゃってた。

『!そうだ、私中也さんの事思い出して……ッ、あれ…?』

思い出したはずだ。
いつも一緒にいてくれてあったかくて、私が大好きで大好きでたまらない……

私、なんでこんなに好きなの?
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