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第8章 空白の時間


「え……で、でも確かに何があったのかは思い出していて…」

首領の言葉に嫌な汗が出る。
やり方はやり方だったが、それはさっきあの男が解決した話だったはずだ。

自分に言い聞かせるように思い込ませようとするものの、首領の言葉は確かに的を得ているもので、頭にそれがこびりついて離れない。

「僕も実際に蝶ちゃんと話さなければなんとも言えないんだけど、いくら特殊な身体を持っていたとしてもあの子だって普通の人間だ。それは君がよく分かっているだろう?」

「……はい」

「君が思い出したと思ったのなら、本当に何かを思い出しはしたんだろうが…それで全部を思い出したと断定するのはまだ早い。蝶ちゃんの事を迎えに行くのなら、それだけは覚悟しておいた方がいい」

覚悟…さっき、あれだけ取り乱した俺だ。
頭に血も上りやすいし、口調もキツい俺だからこそ、首領は先に言っておいたのだろう。

「覚悟…記憶がねえのはやっぱ結構応えるもんが………?」

記憶がねえのは、そこまで言って頭の中にある考えが思い浮かんだ。
俺自身、自分の頭がどうかしちまってるんじゃねえかと思うような荒療治。

「中原君?どうしたんだい、そんな顔して」

「い、いや…記憶がねえってのは、そのものが無くなってるんじゃなくて、存在はしているけど思い出せないって状態なだけなんすよね?」

蝶ちゃんが一部を思い出して、脳に物理的な傷を負っていなければそうだろうねと首領が言う。

「あいつの頭ん中に記憶そのものが存在しているんなら…」

そこまで言って首領も同じ事を思ったのか、はっとしたような表情になる。

「中原君、君は本当に蝶ちゃんの事を理解しきっているようだ…流石に僕もそこまでは考えなかったよ」

「多分いけますよね、あいつは前に同じような事をしようとしてたわけですし。…能力で記憶を操作すれば」

「あの子の技量にもよるだろうが、能力に関していえばずっとずっと使い続けているものだし、いけるかもしれない。あの子の気持ち次第ではあるが、思い出し方としてはありだね」

前に蝶が自分でそれをやろうとしてて、俺があいつの頬を叩いてまでやめさせた事。

「脳内で記憶を操作してもう一度脳にそれを認識させるだなんて事、蝶ちゃんじゃなきゃ出来ないよ」

「……まあ、それを使わずに思い出してもらえればそれが一番なんですけどね。あいつは凄い奴ですよ」
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