第2章 暗闇の中で
「寝た……って、………」
中原に遅れてやってきた他の男子達は、その様子を見て唖然としていた。
「何だよ、おどかすなよな…」
項垂れる中原。
そして合流した男子の中ではヒソヒソと話し声が聞こえる。
「寝顔…やばくねぇか?」
「カルマのポジション羨ましいぜ…」
「どっからどう見てもカップルだよな……隠し撮りとか出来ねぇのかな」
それらを聞いた途端、中原は素早くざわついていた者達の前へと移動し、真っ黒なオーラを放ちながら口を開いた。
「隠し撮り、とか聞こえたが…しねぇよな?」
男子達は全力で首を縦に振っている。
そして赤羽は蝶を起こそうと彼女の肩を掴み、ゆさゆさと揺らしながら声を掛けている。
しかし、どうやらここでも中原の目に付くことがあったらしく、すぐ様赤羽の手を掴んむ。
「あっれ、どしたの中也さん?」
「それ以上起こさなくていい。俺が寝室まで運ぶから、手前らはとっとと部屋に戻って寝ろ。いいな?俺が運ぶから、ぜってぇ付いてくんじゃねぇぞ!?」
そう言い残して蝶を横抱きにし、他を置いて元いた寝室へと向かう。
中原の頭の中には、どうしても先程のやりとりが繰り返し浮かんで離れなかった。
蝶の肩に触れる赤羽の手。
他の者は気付かない様子だったが、揺さぶられる事によって浴衣からちらりと見えていた、成長した蝶の胸部。
そして、それよりも何故か許せなかったのは、そんな無防備な様子の蝶が他の男に見られていること……そして何より、蝶が赤羽と恋人であるかのように見えてしまったことだ。
無性に腹が立つ。
思えば、四年もの月日は、蝶を十分に女性へと成長させていた。
四年ぶりに初めて目視したのが不良に拉致される寸前だったとはいえ、場違いにも、目も心も奪われかけた。
しかし、幼い頃から面倒を見てきたという事で誤魔化している。
「くっそ、…なんでこんなモヤモヤしてんだ俺………でもやっぱ、前にも増して綺麗になってんだよなぁ…」
自分の抱くその気持ちの名前が分からぬまま、見て見ぬ振りをして誤魔化し続けた。
一方で、取り残された赤羽含める男子一同。
「あれで付き合ってないとか」
「どう見たって…なぁ?」
「完全に両想いにしか見えねぇんだよな〜…」
「…まあほら、多分皆気付いただろうけどさ、やっぱ…」
「「「“鈍感”なんだな…」」」