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第8章 空白の時間


「蝶を連れて帰った当日に家でレポートを読み漁っていた時に」

サラリと答えるとまたもや首領に驚かれる。

「君、そんな歳の頃にそれを知っていて…普通、思春期の男子ともなるとそういう事を無神経に聞くような子が多いとも思うのだが」

「聞けるわけないでしょうそんな事?相手は蝶でしたし、当時はまだただ依存していただけかもしれませんが、あの頃から俺はあいつには勝てなかったんですよ」

「…いやあ、本当に驚いた。それで君、それを知っていても他の女性に靡くようなことはなかったのだろう?僕が言うのも変な気はするが、子供というのは大事な選択肢の一つだ…君の性格じゃあこれからも一途な可能性が大いにあるから一応聞くが」

首領から発せられたのは、俺からしてみれば驚く事でもなんでもない、ただの普通の質問だった。
これに対して当然というようにすんなりと心の底からの受け答えが出来る俺は、本当にどこかおかしくなってしまったのではないかと普通の感覚を考えると思う事が出来る。

普通でないのが普通であって、それが当然な事なのだ。

「本当に蝶ちゃんとでいいのかい?君ももう若いとはいえ立派な大人だ、結婚とか家庭とかというものはちゃんと納得がいくように決めないと………」

「結婚…もし俺みたいなのが出来るんだったら、それこそ蝶と出来ればもうそれ以上に何も望みませんね。今の状態でもいいですが、あいつと形式的にも、本当の家族になれる。それに俺自身、餓鬼なんかよりも蝶をずっと、誰よりも独り占めしておきたい質なんで」

子供なんぞに興味はねえ、どこかの木偶なんかと違って女だなんていうものにも何も感じない。
手を上げようと思えば何も躊躇わずに上げられるし、殺そうと思えば何も恐れることなく殺すことが出来る。

探偵社の女医に対して、俺が本気で蹴りを入れかけた時のように。

その相手が蝶でない限り…唯一、あいつでない限りは俺にはなんの興味も起こらないのだ。
次元が違いすぎて他の奴らなんかとは比べられない程にあいつは俺の中で唯一絶対の一番の存在なのだから。

「蝶ちゃんがいなかったら君の楽しみは本当にアルコールと音楽と喧嘩だけになってしまっていたんだろうねえ…ああ、あとは煙草もかな。まさかそこまで考えきっている上であの子のことを好いていたとは、蝶ちゃんが知れば泣いて喜ぶだろうね」

「あいつ、本当に泣き虫ですからね」
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