第8章 空白の時間
「!!はいっ、どんな事でもやってみせます!!!」
「うんうん、その意気なら大丈夫かな。蝶ちゃんのためだからね」
「勿論です!あいつのためなら何を犠牲にしてでも…」
「それは安心だ!じゃあ今度、太宰君と組んでもらおっかな」
最後まで言いきる前にその場の空気が固まった。
俺の目から一瞬で生気が抜けていき、首領相手に死んだ魚のような目を向ける。
「太宰と…あいつ以外の探偵社員じゃあダメなんすか。いや、決してしないというわけではなくて、もう少しマシな人員をと……」
「太宰君と組むのが一番いいって分かってるんだよ。それは君も一緒だろう?」
皮肉な事にも蝶のいない今、や奴と組むのが一番に俺の力を発揮させられる…それは身をもってよく体感していたこと。
しかしあの野郎と組んで俺が働くという言い回しをされるという事は、誰かと衝突するという事だろう。
組合の誰か…それも俺と太宰がまたコンビを組んでまで。
「……はい。ですが首領、それよりも先に蝶の位置情報が先ですからね。そうでもなけりゃ死んでもあいつなんかと…」
「分かった分かった、悪いようにはしないよ。それに探偵社の方だって、蝶ちゃんが攫われたとあってはそちらを優先せざるを得ないだろう?あの子もそうだけど、虎の少年だって捕まってるんだし」
「!まさか蝶の奴、それで………いや、やっぱここでも原因は俺か…」
中途半端に手を出していたのが悪かったのか…聞いた話じゃあ何やら相当蝶のメンタルはやられていたらしいし、恐らくまた俺以外の奴とだとか考えてやがったんだ。
修学旅行の時の反応がいい例だろう。
その上今回なんかは、俺と色々するようになった後だったから余計に…組合の男が言っていたように、軽く愛撫され続けただけで精神をぶっ壊してしまったという話も、悔しいながら納得が出来る。
中原君?と不思議な顔をして首領に聞かれたが、すぐに自分の頭に思い浮かんだ考えを振り払う。
「すみません、何でも」
「そうかい?…まあ蝶ちゃんの事だ、確かに自己犠牲的な手段で突破口を作ってしまうという癖はあるけど……でも指輪を持って行ってまだ敵にそれが知れていないって事は、君が助けに来るのを信じて待ってるって事なんじゃないのかな」
待ってる…そうだ、あいつは待っているからと俺に言葉を残していた。
今回は俺に、ちゃんと助けを求めてくれていた。