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第8章 空白の時間


頭を勢いよく下げて頼み込めば、首領の顔つきが変わる。

「あれを?君があれを使うだなんてとんでもない事態だよ…特に太宰君が抜けてしまった今となっては、それをする為には探偵社と協力しなければならない。彼くらいの力量と入念深さと腕がなければ、最悪他の者に情報が漏れてしまうから「俺が土下座でも何でもしに行きます…お願いですッ、あれが必要なんです!!」…何があったんだい」

首領に頭を上げなさいと言われて、順番に説明をしていった。
沖縄の離島にたどり着いてから蝶が捕まったと知るまでにあった事や、あいつが記憶を失うほどに危うい状態にあった事。

そして、情けない事につい先程…再び敵のステルス機能の搭載された拠点に、蝶が連れ去られてしまった事。

触手が、まだ向こうにはあった。
あれは正しく、蝶から聞いていた通りの触手だった。
何かの兵器でも人工物でもねえ…異能力にしても異様過ぎる。

「成程、蝶ちゃんが…あの子は偉いねえ、そんなに怖い思いをしても指輪を付けて行って、それを敵にまだ隠し通しているだなんて。本当に彼女の言う通り、指輪に端末を埋め込んでおいて正解だったのかもしれない」

「……蝶は、俺の自慢の女ですから」

「!…ハハッ!そうかいそうかい!じゃあ可愛い蝶ちゃんのためにも、その道をやはり考えなくてはならないね……」

今、首領はやはり、と言った。
それに妙に引っかかる。
やはりとは…まさか首領は、探偵社と手を組む事を考慮に入れていたという事なのだろうか。

「首領、その…やはりとはいったい?」

「ん?…うん、蝶ちゃんが前から、うちと探偵社とで諍いがある事に心を痛めていたからね?口にはやっぱり出してくれないんだけど、今回の件でも、両方共の味方をしたがっているんだよ」

あいつらしい…心を痛めている、そんな光景がすぐに瞼の裏に浮かぶ。

「まあ、中原君からのお願いもあるし蝶ちゃんの緊急事態だし、相手の応答によっては手の内の一つとして考えておこう。でも、まだだめだ…相手側と確実に同盟関係を結ぶのであれば、まだ待たなくてはならない」

その言葉に確信した。
首領は、もう蝶が捕まったという事を知ったこの段階で、既に探偵社と手を結ぼうと作戦を練り始められている。

「うーん…そうだね、じゃあ中原君!近い内に仕事を頼むよ……君に土下座なんかさせないさ。ただ、ちょっと働いてもらう」
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