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第8章 空白の時間


トウェインさんは私から離れて笑顔を浮かべて言う。

「うん、気にせず進んで行っててよ。買ったらすぐにまた探すし…蝶ちゃん何が飲みたい?」

『私の分も…?じゃあ、ストレートティー』

「了解!」

トウェインさんは元気に走って自動販売機を探しに行ってしまった。
本当にお人好しだ、私を一人にしてしまうだなんて…逃げられるとか考えないのかなあの人。

そこまで考えて思い出した。
そっか、私が逃げようとも思わなくなるくらいの何かを、組合は持っているんだ。

そして私自身も、多分何かを考えて組合のところに乗った…ただ捕まりに行くだけだなんてこと、私がするはずがない。
何か策を考えていたはずだ。

足を進めていきながら、またピタリと立ち止まる。

でも、どうしてなんだろう。
その策がどんなものであれ、私の事を組合から取り返しに来てくれる人…そんな人が、全くもって想像出来ない。

太宰さんは負傷の身で、そうでなくともどちらかといえば裏で動くことが多い。
戦闘系の異能力者といえばやはり敦さんか芥川さんがふっと思いつくのだけれど、それもしっくりこない…私の中での戦闘系というイメージに、ぴったりと当てはまらないのだ。

誰かが、絶対に私のところにくる…そんな確信が心のどこかにあって、しかしいくら想像しようとも、違う、違うと消えていく。

私の元に絶対に来てくれる人……いや、そうじゃない。
そうじゃないだろう、そうじゃ…

『!…来て欲しい、人………ッきゃ、っ!?』

声に漏らした途端、どこかから強く肩を掴まれてそちらを向かされる。
突然肩に加わった痛いくらいに強い力に顔を歪めて、ぐらつく身体を止めてから反撃しようととっさに左腕を振りかざした。

____はずだった。

『……!!!な、に…っ?あれ、私なんで腕が……ッ』

避ける素振りすら見せようとしないその人に向けて振りかざした腕。
なのに、どこにも何の障害もないのに…腕の勢いを殺してしまった。

その人に攻撃が、出来なかった。

「蝶、だよな…?お前、本物だよな!?」

突然私の名前を必死に呼んで、肩を掴んだまま必死な顔をするその人。

本物…蝶、……私を知ってて、私の知らない男の人。
そしてトウェインさんから聞いていた、私とよく似た服装で、相対的に見ると背のあまり高くない、力強い人。

本能が、直感した。

『ちゅうや、さん?』
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