第8章 空白の時間
行こうかと言って、そうだ、とまた私の方を振り返るトウェインさん。
何かと思って首を傾げていると、今度は彼の方が微笑んで言った。
「首輪…出かけるし外してあげたいのは山々なんだけど、流石にそれは出来ないから、気になりそうなら髪の毛下ろしてから行ってもいいよ」
首輪を外してもらえるだなんてことは考えもしていなかったが、私が女性の身体に生まれてきたことを意識して、気にしてくれたのだろうか。
『下ろしてもって…?あれ、またなんで私髪なんかくくってるんだろ』
ゴムを外そうと、普段慣れない格好をするのはやめておこうと思って、手を頭にやろうとした。
けれど、それを外すことは出来なかった。
『…このままでいいや。外に出る時はこれでいい』
「!そうかい。まあ首輪も細でのものだし、そこまで目立ちはしないと思うけど」
『うん、連れてって。あと先に言っておくけど、私結構食べるよ。大丈夫?』
「大丈夫大丈夫!ボスからお金出てるし、僕のも持っていくから!」
本当に大丈夫かなあと思いつつ、笑顔のトウェインさんのお言葉に甘えて、食べに連れていってもらうことにした。
ホットパンツのポケットに入れておいた黒手袋は、ベッドの上に放置していった。
「ち……蝶ちゃん、ど、どうだい?」
『これ美味しい…っ、あと何個でも食べられそう!』
喫茶店にて甘いもの…アイスにパフェにケーキといったものをそれぞれ堪能していて、そろそろトウェインさんの顔が青くなってくる。
「えっ、君さっきまであれだけ食べてたよね!?」
『うん、でも名前思い出したら食べるのやめられなくなった』
「いや、アイス五つとケーキ五つと……今そのパフェいくつ目?」
『今日はこれの気分なのかも?今で…八つ目』
「どう数えても十個目だよね!?分かってるでしょ!?なんでちょっとサバ読んでるの!!」
いいじゃないですか細かい事は、と無理矢理な言い返しをすると頭を抱えてしまうトウェインさん。
それも面白いのだけれど、今はパフェで頭の中がいっぱいだ。
『トウェインさんももっと食べないの?こんなに美味しいのに』
「普通、一人一つか二つくらいでお腹いっぱいになっちゃうの!結構食べるって言ってたから五つくらいは覚悟してたの!!何で二桁も食べれるんだよ!?」
『甘いものの為にもう一つ胃があるの』
「無いからね!?」