第8章 空白の時間
『ん…ッ、あれ……ここ………って、ええ!!?』
なんだかよく眠った気がする。
胸が少し息苦しくって目を開いて見てみれば、私に腕が回されていた。
そしてそこを辿っていくと、腕を見ただけでもそんな気はしていたのだが、それはトウェインさんのものだった。
「ん〜…?……んん!?蝶ちゃん目覚めた!?覚めたんだね、よし!!」
『よ、よよよよしじゃ無いわよこの変態!!!何しれっと乙女に添い寝なんかしてんですか!!馬鹿なんですか!!?』
近い、非常に近い…というよりももう既に身体が密着している状態だ。
早く離したいものの、ベッドの上からトウェインさんを落とすわけにもいかず、勢いよく暴言を吐く。
「ま、まってまって!?蝶ちゃん、今体の調子どう?昨日気を失ってから全然起きてくれなくって僕焦ったんだよ!?」
『へっ?昨日…え、昨日!?今……夜?』
窓の外を見ると外はもう暗くなっていて、それが夜なのだと認識した。
「そうだよ、頭痛そうにし始めたかと思ったら気失っちゃうんだから!!」
『……なんとも、ない…です』
「本当?なら良かっ…蝶ちゃん、何か思い出せた事ある?昨日、指輪見てから様子がおかしくなっちゃってたし」
指輪、そう聞いてから再び自身の胸元に手を忍ばせてそれを握り、そこにある事を確認する。
『あった…よかった……?…え、よかった?』
「ボスに聞いた話じゃ、四年前にもつけてたらしいねそれ。…よっぽど蝶ちゃんにとって大事なものなんだよ、きっと。さっきも一瞬、すっごい幸せそうな顔してた」
『幸せ…私が?トウェインさん達に良くしてもらってるだけでも、十分幸せだよ、私』
記憶が混乱しておかしくなってる私をおいて、自分のせいだと言いつつも見捨てないでいてくれる。
本来的であるはずの私をこんな風に生かしてくれているんだ、人の良さが出ているのだろう。
「!そ、っか…うん、そう言ってもらえると嬉しいよ、ありがとう」
『ううん、私もありがとう…って、何かトウェインさんに失礼な口の利き方ばっかりしてますね私。年下…まあ年下なのにすみません』
「え、全然いいんだよ!?まあ多少扱いが酷くなってる気はするけど、折角敬語抜いてくれるようになったのに!!」
『……ない方がいいの?てか私、なんでトウェインさんにこんなタメ口ばっかり』
敬語いらないから!と押され、一回頷いた。