第7章 克服の時間
カルマまでもが不思議そうな顔を浮かべて、どうして俺が助かったなどと口にしたのかを疑問に思っている。
「ねえ中也さん、何が助かったの?なんで蝶ちゃんにまたちょっと怒って……これ、片方はまあ分かるけど、もう片方は正直意味わかんないよ?」
「先生にもサッパリです…………“ユビワ モッテル。マッテルカラ”…待ってるから、は分かりますが、どうして指輪の話を…?」
担任の声に少しだけ得意顔になって、やり方は気に食わねえが蝶が何を考えていたのかを理解して、説明した。
「両方ともそのままの意味だよ、あいつがいつも首に指輪付けてんのは知ってるな?」
「中原さんからもらったものなんですよね?」
「そうだ。あれはまあ四年前に一回壊れてたんだが…最近修理して前よりもグレードアップさせた状態で蝶に返したんだよ」
どういう事?とまた全員が首を傾げる。
「あの指輪はな、使うのはかなり面倒臭い手順を踏まなくちゃならねえんだが…発信機になっていて、特定のレーダーに反応させる事が出来る仕組みになってんだ」
「「「!!!」」」
一瞬でハッとして、全員顔を上げた。
「こいつを叩けば蝶も取り戻せて組合に傾注できる…担任!俺を横浜まで連れてってくれねえか!?俺は自分の異能で風圧にも重力にも耐えられる、全速力で頼みたい!」
「勿論です!何なら私も協力しましょう!空も飛べますから」
「!…本当、いい奴だぜ。じゃあ手前ら、後は任せろ!しばらく担任借りてくぞ!!」
超生物は触手で俺を掴んで、窓から外に出て音速で飛び、すぐさま横浜へと移動する。
それは予想よりも断然早く、気付けば……目の前に太宰の野郎がいた。
「ってなんでこいつのとこなんだよ!!?」
「マッハで太宰さんの病室に到着です」
「戻ってきたのだね?それで、何か分かったんだろう?」
太宰の言葉に冷静になって、蝶が探偵社員であったということを思い出した。
「……あれの信号を発信させる装置を使うのがまた大変ではあるが…蝶の奴、ちゃんと指輪を持って行ったまま捕まったらしい。それに、よくよく考えればあいつの事を好いてプロポーズまでした奴のためにつかまったそうだからな。殺されるという心配は、まず、ねえだろ」
「そうか、指輪を……了解。それなら時期を待てば、組合を落として蝶ちゃんを助けられる」
「ヌルフフフ、私も参戦しますよ」