第7章 克服の時間
俺と電話越しの太宰が声を荒げ、様子が変わるのを見て、烏間さんも担任も戸惑い始める。
「な、なんだ?白石さんに何かあったのか!?」
「なんだも何も…っ、烏間さんも担任も、急いで蝶の部屋についてきてくれ!!」
「ニュッ!?白石さんの部屋には近づくなと…」
走り始めると二人共戸惑いつつも俺についてくる。
確かに言われた、近づくなと…そして行ってみると確かに声も聞こえた。
が、しかし、相手は蝶…何百年も生き続けてきて、色んなものを見てきた蝶だ。
頭が良すぎて困るくらいに頭がきれ、手も器用で、本気を出せばハニートラップの達人にも見破られないような演技力を持つあの蝶だ。
嫌な想像が頭に浮かんで、それがどうか違っていてくれと願いながらも、蝶の部屋の前に到着する。
烏間さんがマスターキーを持っていたため、それを使って認証させようとした。
「待ってくれ中原さん!白石さんには近づくなと俺達全員が言われて…」
「それが一番危ねぇんだよ!!……な、ッ!!?」
「!!烏間先生、これは!?」
烏間さんの意見に反論してマスターキーを認証させた。
これで鍵が解除される、はずだった。
「おい太宰!蝶の奴、部屋のロックに細工してやがるぞ!!どうすればいい!?」
「「なんだって!!?」」
烏間さんと太宰の声が重なる。
担任が持ち前のスピードで何とかしようとするも、見たこともないようなプログラムで細工されているらしく、烏間さんが強行突破をしようとするも開かない。
そんな事をしてる時点で、あいつがろくでもねえこと企んでるなんざ全員が分かりきってしまった。
「中也、仕方がない、もう無理矢理開けるんだ!!」
「無理矢理って…!!烏間さん、このドア壊す、退いてくれ!!!」
「壊すっ!?こんなドアを……っ」
烏間さんはすぐにその場から離れた。
それを確認して足で思いっきり扉を蹴破る。
すぐに扉は大きな音を立てて崩れ落ち、塵がまう中部屋に入れば、そこに蝶はいなかった。
「……!…自作のアプリ入のハードウェア…こいつかよっ!?」
少し遅れて担任と烏間さんも入ってくる。
蝶の声は、ハードウェアから流されていたものだった。
そして部屋の中に残っていたのは、蝶の持っていった荷物のみ。
丁寧に窓もカーテンも閉められており、部屋の証明はついたまま……そこには誰も、いなかった。