第7章 克服の時間
「蝶が、取引?まあ確かにあいつは頭もきれるしここは横浜じゃねえし、一番取引がしやすいのはしやすいだろうが…蝶が俺を近づけねえよう言うくれえならよっぽどの事なのか」
急いで駆けつけてきたものの、取引が出来るほどに…そして俺自身がいなくてもちゃんとした話が出来るようにまで精神状態が回復したのかと、急いできたのにという気持ちよりもそっちにまず安心した。
「ああ、初め取引相手と出くわして俺が言われたのは向こうで治療薬を取りに行っている時で、先に行けと言われて、一人では危険だと言ったのだが…人の命がかかっていると説得されてな」
「あいつらしい意見だな」
「それでも危険だからと言ったのだが、それ以上言うのならば護衛役の契約を破棄するとまで持ち出された。よっぽどの取引なんだろう」
本人も、今日は寝られる気がしない、下手すれば明日の夜までかかると言っていた。
烏間さんの言葉に少し目を見開いて、少し蝶の事が心配になってきた。
元々心配してここまで一人で来たものの、最悪長ければ明日の夜中…下手すれば明後日まで部屋に籠ると言っているのだ。
飯は、水分は…休養は、十分に取れるのだろうか。
しかし俺がそれを気にして部屋に乗り込みでもすれば、蝶が契約を破棄すると烏間さんに言ってまで大事にしたがったらしい取引がめちゃくちゃになっちまう。
…こういう時に、ポートマフィアの幹部っつう役職が、嫌で嫌で仕方がない。
蝶の為にと成り上がりはしたものの、実質俺が蝶のために動こうとすれば、お互いの立場というものが邪魔になる。
「そうか…ならあいつが出てくんのを待つしかねえ。烏間さん、明日の夕方にもなれば、死んでなければ担任は動けるようになるんだろ?俺も今日はこっちで泊まるから…もし横浜の方で何かあったら、連れてってあのスピードでもらえると非常にありがたいんだが」
かなり自分勝手な頼み事だとは思う。
勝手に来ておいてなんだとは思うが、そっちもそっちで、それこそ部下や首領の命がかかっているんだ。
何も無いことを祈ってはいるが…
「恐らく大丈夫だろう、奴は死なないだろうからな、悔しい事に。…後、中原さん。心配されなくとも中原さんの分の部屋も食事も、こちらで全て用意済みだ」
「それはありがてえ!じゃあ俺も休ませてもらうとするよ、もし蝶が出てきたら起こしてもらえると助かる」