第7章 克服の時間
トウェインさんが私から離れて上体を起こす。
確認してみたらどうだいと言われて、私も上体を起こした。
『………なんでだろ、悔しいくらいにすっごい私好み』
「ああ、やっぱりそこはそうなんだ…って、そういえばずっと気になってたんだけどさ?」
トウェインさんは顔をまた私の方に寄せて、首元を見て言った。
「その首につけてる指輪、前に学校に行ってた時も毎回つけてたよね。お気に入りなの?」
『え、指輪?指輪なんてどこに……首、?』
慌てて襟の中に指を忍ばせ、手探りで探ればチェーンに触れる。
首って、こういう事か。
それをそのまま襟から出せば、トウェインさんの言うように本当に指輪がついていた。
そして、段々と頭が気持ち悪くなってくる。
『な、にこれ…っ?私、なんで指輪なんか……頭痛い…っ』
「!蝶ちゃん、深呼吸して何も考えないようにするんだ。今白桃ゼリーも無いし、薬飲みたくないんでしょ、何とか頑張って落ち着いてっ」
『白桃ゼリーって…あれ、指輪、これいつもつけてた?白桃ゼリー…なんで私、それで薬を飲むようになった?指輪なんかなんで私みたいなのが持って……____』
「蝶ちゃん!!?」
グラリと身体を自力で支えられなくなって、何故か指輪を手で痛いくらいに握りしめながら、プツリと意識を途切れさせた。
……あれ、なんで私、指輪なんて握りしめたんだっけ。
なんで私、敵の船に乗せられるのに、アクセサリーなんかつけてきてるんだっけ。
その頃、普久間島リゾートホテルには、中原中也が到着していた。
椚ヶ丘の生徒達は皆泥のように眠りについてしまっていて、ホテルに戻っていると烏間から連絡が入り、すぐにそこへ向かったのだ。
「!烏間さん」
「中原さんか、よかった…丁度今ひと段落ついたところだったんだ」
烏間の様子を見るとどうやら何事も起こらなかったようで、自身の心配していた事態になってはいなかったのだと安心する中原。
「そ、そうか…蝶の奴は?あいつも寝てるんなら、せめてすぐに首輪だけでも……」
中原がそう口にすると、烏間はああ…と、何やら難しい顔をする。
「組織の都合上あまり詳しくは話さない方がいいのだろうが…何やら探偵社の方で、今の状況を打破すべく取引があるらしくてな。その取引相手が今日来ていたようで、中原さんを部屋に近づけないよう頼まれてるんだ」