第7章 克服の時間
トウェインさんに肩を軽く押されてベッドに押し倒されたんだと理解するのに、そんなに時間はかからなかった。
天井を背景に、トウェインさんの顔が映る。
『え、っと……トウェイン、さん…?』
「好きなようになんて出来るわけないでしょ…それとも何、またこういう事、されたいの」
『こういう事って、いったい何を……ッ!!』
聞こうとしたのに、気になっただけだったのに。
トウェインさんに両腕を軽く掴まれて、顔を至近距離にまで近づけられる。
その瞬間、頭の中で警報がなっているように、ダメだダメだと思考が止まる。
目を見開いてそのまま硬直して、掴まれた腕が自分のものではないようにして震えてくる。
「ねえ、僕と会った日に、僕が蝶ちゃんの事泣かせちゃったの覚えてる?」
『な、に…っ?私が、トウェインさんに……?と、トウェインさんは馬鹿みたいに優しい人で…ッ』
シャツの首元に手をかけられて、一つ、ボタンを外された。
なんで、何をする気なの、そんな事も勿論考えた。
けれど、今はそんな事ではすまされないほど、私の身体がおかしくなっている。
「優しい?僕が…?……誰のせいで今、蝶ちゃんがそんな風になっちゃってると思ってんの」
『ぁ…、な、んで……?ね、トウェインさん…ッな、何かこれ……ダメ………っ』
「ダメって、何が?言ってごらん」
『…こ、この体制……なんか、怖いの。男の人にこんなに近寄られたの初めてだし…なんかダメッ、恥ずかしいとかじゃなくって……怖いッ…』
少し間を置いて、怖がらせてごめんね、とトウェインさんは私の服を戻し、頭を優しく撫でる。
「でも、俺が君にしたのはこういう怖い事だったんだよ。…あと、君は男にこうされるのは初めてなんかじゃない」
トウェインさんが、私に怖いことばかり…?
初めてじゃ、ない……?
『と、トウェインさんは…組合で私を一番理解してくれてて……っ、私の事が好きだって言ってくれた人でしょう?ここに一人で来た私が、一番安心出来る人でッ……あれ、なんで私ここに来たの?おかしいな、さっきまで納得して………あ、皆だ。それで…』
そこからの続きは、私の頭の中には何も無かった。
何も、無かったのだ。
「…本当に君はあの男の事ばかりを思い続けていたんだね、痛いくらいに思い知らされるよ」
『!また?また、中原中也さん…?ねえ、どんな人なの?』