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第7章 克服の時間


頭を鈍器で殴られたような衝撃を受けた。

『う、嘘…嘘、ですよね?そんな、そんなはずないじゃないですかっ?』

「嘘ではない。組合が君を調べ尽くした情報と照らし合わせてみても、君が思い出せていないのは…それに関連している人物は、全てただ一人に絞られている」

トウェインさんとフランシスさんの顔をバッと見るも、その顔はドクターの意見を肯定するようなものにしか見えない。

一人?
たった、一人の人を忘れてるの?

『で、でも!!…それなら、なんで私の記憶はこんなにもつまらない量のものなんですか!?教えてくださいよっ…一日二十四時間、それが何年も蓄積されていれば、一人の人の事を忘れても他の事は覚えてるんでしょう!?……なんでこんなに、私の記憶は少ないんですかっ?』

一つ一つの覚えているものが、全て途中で途切れていたり、それぞれの記憶に連続性が全くなくて、どう見ても何日も日を空けているものどうしだったり…

私に残った、その人と関係のない記憶とやらは、本当にちっぽけなものだった。
気分が悪くなるくらいに、なんにも思い出せないんだ…なんにも、知らないんだ。

ドクターは少し目を細めて私を見て、真のある声で言い放った。

「……それは、君がそれだけその人物の事を考えて、思い続けていたからだ。…それだけその人物の事が大切で、それだけ好きだったという事だろう。今回君は、自己防衛のためにと忘れ去りたくなるほどに…それか心の奥底に押し込めたくなるほどにその人物に関する何かに怯えていたんだろう」

『…………わか、りました…全然分からないですけど…私が知らないものがどれだけ大事な事だったのかは、多分わかり、ました』

「そうだね…精神安定剤と軽めの睡眠薬だけ処方しておこう。後、気分が悪くなったり意識が飛びそうになりでもすれば、すぐに思い出そうとするのはやめるんだ。いいね」

そんな事を言われたって、それだけ大切な事を忘れてしまっているのに、出来るのだろうか…忘れたままで、いいのだろうか。

とりあえずコクリと頷けば、薬をトウェインさんに渡して、フランシスさんと一緒にドクターは出ていってしまった。
フランシスさんは去り際、また明日様子を見に来る。俺はドクターと詳しく話すからと言って、今度は部屋の扉を閉めて出ていった。

「蝶ちゃん、とりあえずこっちの薬だけ飲もっか。水持ってきたからさ」
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