第7章 克服の時間
階段を降りていれば、スモッグさんと、何故か鼻と唇が赤く腫れているグリップさん…そして、恐らくロヴロさんが元々依頼していたあと一人の殺し屋、ガストロさんと思われる男の人と対面する。
相手にもこちらにも戦うつもりはなく、スモッグさんに話しかけられる。
「嬢ちゃん本当に何者だい?あんな戦闘だけでも驚きだが、まさかウイルスじゃないとバレるとは…」
「お前はあの少年戦士の師匠だったぬな。見事だった…俺位に頑丈でも、あのスピードとパワーになら、本気のお前と勝負してどうなっているか分からん」
「こいつか噂の護衛係!あーっ、俺も殺り合いたかったあ!!おしいことをした!」
あれ、何この状況?
なんか私、殺し屋さんたちにちょっと興味持たれてる?
『あー、あはは…まあ、また機会があればいつでも。とりあえず私は今から色々と忙しいんで…あ、ちゃんと栄養剤か何か、皆に渡してあげて下さいね?御三方とも、プロなんですから』
「「「!!」」」
『では…あ、後ついでに、皆にごめんねって伝えてて下さい。忙しくなかったら私ももう少しいたんですけど…じゃ』
フランシスさんは何も言わなかった。
ちょっとくらい睨まれるかもと思ったのに、そんな事は一切無く、静かに私をエスコートするように、前を歩いていく。
普久間島リゾートホテルの私の部屋にフランシスさんを案内し、そのまま鍵が開かないようにロックする。
そして贈り物用に包んだ帽子を鞄の中にしまい、持ってきていた工具やハードウェア、ケーブル等を取り出して、ホテルの扉に細工をする。
「何をしているんだね?」
『ちょっと工夫しておかないとすぐに気づかれちゃうと困りますから…せめて明日の夜までは、誰にも気付かれないようにしないと』
「ああ、他の者達の思い出作りを邪魔しない為だったか…どうしてそういうところでは子供になりきらない。誰かに助けを求める事くらい、君なら出来てもおかしくないだろう」
扉の細工を終えて、フランシスさんに向き直る。
『私が助け?…そんなの、誰を呼ぶんです。私は、仲間全員を自分可愛さに裏切ってるんですから』
「………普通人間はそうさ。君は普通の人間よりもよっぽど純粋な少女だ、そんなに気に病む必要はないと思うがね」
『子供じゃないですよ。…じゃあ早く行きましょ、皆が帰ってくる前に。モビーディック……でしたよね』