第7章 克服の時間
「う、受け止めた!?」
「え、しかも足一本でって…あいつ前は腕でガードしてて重そうにしてたのに!?」
皆の声もちゃんと届いてる。
でも、皆に危害が及ばないと分かっていれば、私は力を制限することなく戦える。
『…フランシスさん、異能力使ってでもいいんで、潮田君をお願いします』
「君は俺の異能力を知らなかったはずだと思うんだが…まあいい」
フランシスさんは異能力を発動させたのか、常人の何倍もの脚力で屋根と屋根の間を飛び越え、こちらに来る。
そして潮田君を、先ほどの私と同じように横抱きにして元の場所に連れて戻ってくれた。
「ぼ、僕一応男なんですけど…」
「そうだったか、それは…まあ、そんな事もある」
「「「この人、渚の扱いを分かってる…!!」」」
私は人に体術を使って挑む時なんて滅多にない。
しかし、この男には、意地でもそれだけで勝ちたかった。
「し、白石…お前はッ、お前だけは許さねえ……ッ!今日はお付きのあのチビ野郎もいねえんだろ!!かかってこい、今日はもっと痛い目に合わせてやる!!!」
興奮した様子の鷹岡だけれど、正直言って心の冷めてる今の私にそんな事を言ったところで、なんの効果もない。
私は今、ただの白石蝶なんだから。
お付きの人なんて、私にはいないんだから。
両手に黒の薄手の革手袋をはめて、いつもの癖や戦闘イメージ、その全てからあの人の姿を抹消して呼吸を整える。
『…烏間先生!皆に見せない方がいいかもしれないと判断したら、すぐに見えないようにして下さい!勢いが止められなくなったら困るんで』
「!了解した…皆、もう少し後ろに下がっていよう。俺も、どのくらいの戦いになるのか予測がつかない」
烏間先生が全員をもっと遠くに行かせてくれたおかげで、気がかりは消えた。
「舐めた真似しやがって……!!!」
さっきよりも凄い勢いで向かってくる鷹岡。
今度の攻撃は………右足か。
「……っな、ッ!!?ぐあっ!!」
すぐさま振り上げられた攻撃を避けて、鷹岡の右足が上がったのを掴んで思いっきり後ろに投げる。
そして、力加減なんてものは知らないと言った具合に…思いっきり、全力で回し蹴りを入れて、後方に投げ飛ばした鷹岡を今度は前方に蹴り飛ばす。
大きな鈍い音が聞こえて、鷹岡のぶつかった屋上の鉄製の柵が歪み、外れかける。
あれは…折れたのかもしれない。