第7章 克服の時間
「…ところで、そろそろ彼らも最上階に到着する頃じゃあないのかね。トウェイン君は顔が割れてしまっているから同行できないが、俺なら力を貸してもいいぞ。新たな同胞の為ならな」
『最上階に…?……フランシス…さん、お願いします』
相手の力が分からない以上、協力してもいいと言ってくれる異能力者がいるのは心強い事。
一緒に行くのが怖くないわけじゃない。
でも、一人で行くよりは全然いい。
戦力的にもそうだけれど…一人で行って、心を許している友達や、何よりカルマ君の目の前でボロを出してはいけないから。
皆にこの人に歯向かわせてしまうと、私の計画が台無しになってしまうから。
大丈夫、大丈夫…私はまだ、壊れないから。
おかしくなってても、壊れたりなんてしてないんだから。
フランシスさんはこのホテルのエレベーターの使用に必要なカードも持っていたらしく、最上階まで一気に進むことが出来た。
しかし到着したはいいものの、そこには大量のリモコンのようなものが散らばっているだけ…つきっぱなしのコンピュータの前の椅子には誰も座っておらず、もぬけの殻だった。
『……!これ、この写真って、まさか…っ』
「…先に言っておこう、君はもう薄々勘づいてはいたかもしれないが、今回の件の首謀者にその枷を渡したのは俺だ。相手の男には、能力の事は説明せず、人間の神経に作用して弱らせる為のものだと説明しておいた」
そんな気はしていた、しかしそれ以上に色々なことが起こりすぎていたために、そんな事はもうどうでも良かった。
さっきまでだっていっぱいいっぱいだったのに、コンピュータに表示されているファイルの中に見つけた名前…それを見て、私の中に嫌悪感が溢れ出てくる。
『フランシスさん、この男とお会いしたことは?』
「ない。下級構成員と取引をさせただけだ。向こうは俺の顔も知らないさ」
『ならよかった…上から妙な気配がしますから恐らく皆屋上に出ています。本当なら、すぐにでもフランシスさんに頼んで治療薬を奪いたいところ……なんですけど』
一旦口を閉じて、手を思いっきり握りしめていると、フランシスさんがまた驚いたような目線を送ってきた。
「…そんな顔をしてどうしたんだ。いくら君の体質でも、俺の所有物が血を流すところは見たくないんだが」
『……いえ。ただ、この男は…鷹岡明は、私に相手をさせて下さい』