第7章 克服の時間
「…確かに君の気持ちは理解した。けれど、何処までが本当か皆目検討がつかない……トウェイン君」
『!トウェインさん…?』
フランシスがトウェインさんの名前を呼ぶと、いつの間に建物内に侵入していたのか、下の階からの階段からこちらに向かう足音が聴こえ始める。
トウェインさんはいつにも増して真剣な目で私を捉えていて、私は何だか背筋が凍りつくような寒気に見舞われた。
「トウェイン君、後は任せた。予定通りだ…様子はこちらから見ておくが、存分にしてくれて構わない。部屋にはこの鍵で入れる」
「了解……でも、本当に必要あるんですか?何もそこまでしなくとも、本人がここまで言ってるし……」
カードキーを受け取るトウェインさんと、思わず少し距離をとった。
「……何より、あんまりこの子を怯えさせたくはないんだけど」
チラリと横目に捉えられて、肩がピク、と動く。
「必要だ。それに、痛めつけるのに反対し続けたのは、他の誰でもなく君だ。そうなると、もうこうする他ないだろう?」
『何、っ?何、するつもり?』
ドクンドクンと胸がうるさい。
トウェインさんがそんな事を言うだなんて、いったい何をしようというのだ、この人は。
「なに、君に心から服従してもらわなくてはならないからねえ?勘違いするな、これは交渉ではない…君も先程言ってはいたが、君はお願いをする立場なのだ。変な事を考えられると困るから、その前にちゃんとしたお願いをしてもらうんだよ」
「ボス、でもやっぱりこれは…っ」
「トウェイン君、手を出されたくはないのだろう?傷付けられたくないのであれば、この子が女性である事を利用するしか、屈服させる方法は無い」
お願い…屈服……しかし、痛めつけるようなものではない。
頭の理解が追いつかなくて冷や汗を流していれば、トウェインさんが私の前にやって来た。
「そうだ、それでいい。…ああ、君に一つ言っておこう。これから我々に危害を加える事は一切許さない…何があっても、トウェイン君に攻撃なんてしてはいけないよ?君は我々にお願いをする立場なんだからね」
フランシスは皆の行った方に歩いていってしまう。
『!待って、皆に何するつもり!?』
「何もしないさ、君がトウェイン君に何もしなければ。ただ、少し時間がかかるだろうから、俺が君の代わりに皆の護衛を務めてやろうと思ってね」