第2章 暗闇の中で
『え、と……カルマ君、冗談はよくないよ。だって中也さんがこんなところにいるわけないじゃん?小競り合いの鎮圧のために、もう半年も横浜にさえ帰ってきてないのに』
「ごめん、言わない方がいいと思って黙ってたんだけど…あれだよ、発信機」
発信機と言われ、小型無線機を思い出す。
「あれ、盗聴機能までついてたんでしょ?太宰さんから渡された……でも、蝶ちゃんが持たされた機械からの電波を受信する方の機械は、太宰さんから他の人の手に渡ってたんだよ。」
すらすらと説明してくれるカルマ君。
ドクン、ドクンと胸の動悸が鳴り止まない。
「それで、その人の事を駅で目撃した俺は接触したんだ。…中也さんに」
『中也さん、…だからこの外套が私に、?確かにあんなに静かに戦闘する人なんていないけど……でも、!!』
「ホントだよ。蝶ちゃんが起きてから安心出来るようにって、なるべく人を寄せ付けないよう指示を出したのも、ここまで蝶ちゃんを運んできたのも…外套で出来るだけ蝶ちゃんが人目に触れないようにしてたのも、全部中也さん。」
『嘘、そんな、中也さん絡みの嘘なんてダメだよカルマ君…冗談キツイって、』
苦笑い浮かべて相手を見るも、目を見ればそれが冗談なんかじゃないなんてことくらいすぐにわかる。
何よりこの腕に抱えている外套から感じる懐かしさが、嫌でもあの人を彷彿とさせる。
『……部屋、戻る』
「蝶ちゃん!?」
早く一人になりたくて、失礼だとは思いつつもカルマ君の元から走って部屋に逃げ込んだ。
扉も窓も閉め切って、暗くなった部屋の一隅に蹲る。
頭の中に巡らされるのは中也さんの事ばかり。
しかし、今回に関しては嬉しいものなどではなかった。
勿論中也さんが来てくれただなんてとても嬉しい。
でも、それ以前に重大な事実が突き付けられてしまったのだ。
『見ら、れた…』
ダメだ、考えないようにしてたのに。
『あんなとこ見られて…』
それに盗聴機能があったんなら、全部聴かれてたってことだ。
『……、汚い、っやだよ、!やだ、っ』
中也さんじゃない男の人にあんな醜態を晒させられて
あんな辱めまで受けて
『汚い、っ、こんなんじゃ、もう会えないじゃん、っ、』
涙なんていくらでも溢れてくる。
こんな汚れた身体なんかじゃ、会う資格がない
好きでいる資格も…
「誰に会えないって?」