第2章 暗闇の中で
宿舎にて赤羽達と合流した中原。
「あ、中也さん…蝶ちゃんは……」
赤羽を筆頭に、蝶の班員と教師三人が中原の元に集まる。
「安心しろ、寝てるだけだ。…手前ら、済まなかった。俺がちゃんと動けてれば、こんな事になる前に済んだかもしれねぇ。」
蝶を抱えたまま頭を下げる中原に、一同は動揺を隠せない。
「と、とりあえず頭を上げてください!それに、中原さんが謝ることじゃないと思うんですが…」
潮田の一言で頭を上げる中原。
「確かに手前らはそう思うかもしれねぇ…だが、襲撃を受けてた時、俺が出てればそこで全部終わってたんだよ。……俺が、こいつの前に出るのを躊躇ったからこうなっちまったんだ。」
最後の呟きは超生物を除いて聞き取ることが出来なかった。
「悪い、暗くしちまったな。とりあえず蝶の部屋に案内してくれねぇか?」
案内されて入ったのは和室。
布団を一枚敷き、その上に蝶をそっと寝かせる。
「…いきなり出てきた野郎に仕切られるのは嫌かもしれねぇが、こいつが起きたら、気が済むまで一人にさせてやってほしい。だから、出来れば部屋も一人で…事情を知らねぇ他の奴らとも鉢合わせにならねえようにしてやってくれねぇか。」
誰も返事を返せないでいる中、口を開いたのは超生物。
「いいでしょう。彼女の事は、恐らく貴方が一番理解している……ただし、さっき貴方は自分のせいだ、とご自分のことを責め立ててらっしゃいましたね?」
「ああ、そうだ。」
「では、白石さんが落ち着いたら……貴方から会って、ちゃんと話をして上げてください。」
目を大きく見開いた後、
「……分かってるよ、こいつが、あんたみたいないい担任に巡り会えたみたいで良かった。」
と微笑んだ。
その表情には横浜最恐のポートマフィアの幹部としての威圧感はなく、ただ一人の少女に対する深い愛情が滲み出ていた。
そうして全員各々の部屋へと戻り、教師三人によって大まかな説明が生徒達に話され、中原の要望は達成されそうな様子である。
それから数時間が経ち、蝶は目を覚ました。
『……ここ、宿舎?』
上体を起こして辺りを確認してみるも、誰もいない。
その状況に、ほっと胸を撫で下ろした。
『よかった、誰もいない……』
本当は誰かと会った方がいいのだろうけれど、生憎今の私はあまり人と触れ合いたくはなかったのだ。