第2章 暗闇の中で
私が今捕まっているこの空間の扉が破られた大きな音
それが聴こえてから、私には別の恐怖心が生まれていた。
「な、何なんだお前!いきなり入っ……!!」
先程まで私を触っていた男達が次々に倒されていくのがわかる。
てっきり、カルマ君あたりが来てくれたものだと思っていたのだけれど、男の反応からしてみると知らない人のようだ。
それに、さっきからその人物の声も聴こえない。
コツ、と、男達を倒し終えたのであろう人物の足音が近寄ってくる。
普段ならなんてことは無いが、体は自由が効かずに視界も奪われており、先程まで受けていた男達からの辱めによって、抵抗どころか言葉を紡ぐことさえ出来ない。
誰なの、助けに来てくれた?それとも……
『っ、!!ふぁ、…』
突然触れられる頬。
それだけなのに、感覚が敏感になっている今の私には少々刺激が強すぎるのか、甘い声が漏れる。
「!!」
その瞬間手は離されたが、今度は何か暖かい布に全身が覆われる。
襲って来ない…助けなの、?
それにこの布、何だかとっても落ち着く香りがする。
腕と足も解放され、拘束が解けた私の体は力を入れることが出来ずに、重力に従って地面に着いた。
体が倒れそうになったものの、布越しに正体のわからないその人が支えてくれ、まだ目隠しはとってもらえてないけど抱え上げてくれた。
腕からじんわり伝わるあたたかさと、本能的に安心感を誘発してくるこの人の香りに落ち着かされ、段々と睡魔がおそってくる。
「……悪ぃ、」
ボソリと呟かれた、今にも消え入りそうな掠れた小さな声。
それと同時に目隠しも外され、涙でぼやけ、眠りそうになりながらも薄目に見たその人。
顔ははっきりと見えなかったけど、この感じ、前にもあったような気がする。
この腕に抱き上げられて、この香りに包まれて……
私、この人の事、知ってる……?
その人に横抱きにされ、その人の歩きにゆっくりと揺られながら、何故なのか幸せを感じながらも意識を手放した。
「……俺のせいなんだ、すまねぇ、っ」
蝶を抱える腕に、力が入る。
そして彼女の額の前髪を掻き分け、軽く触れるだけの口付けを落とす。
中原は暗い面持ちで、E組の宿舎へと、壊れ物を扱う様にゆっくりと蝶を運んで行った。