第7章 克服の時間
「白石さん、その格好は…」
「あらら、蝶ちゃんも相当頭にキてんねこれは。寧ろ相手が可哀想だわ」
シャツにベストにいつもの黒タイツ、そして黒のホットパンツ。
黒色の薄手の上着は着てきたものの腕まくりをして、外套は時期が時期なので置いてきた。
私の好みで選んだはずの格好なのだが、どことなく中也さんを連想させる。
これで、ポートマフィア時代も生きてきた。
『怒ってんのは私だけじゃないんでしょ。いいから、早く行こう。時間ないんだし、ここでグダグダしてるだけならそれこそ私一人で先行くよ』
白石さんの言う通り…行きましょう、と殺せんせーは、目の前にそびえる高い高い崖を見て言う。
「敵の意のままになりたくないなら手段はひとつ!患者10人と看病に残した2人を除き、動ける生徒全員でここから侵入し、最上階を奇襲して治療薬を奪い取る!!」
「危険すぎる。この手慣れた脅迫の手口。敵は明らかにプロの者だぞ」
烏間先生はまだ渋っている。
何だかんだで、やはりここの生徒達には甘い人だ、この人も。
「ええ、しかも私は君達の安全を守れない。大人しく私を渡した方が得策かもしれません。どうしますか?全ては君達と、指揮官の烏間先生次第です」
殺せんせーの言葉に、皆からはちょっと難しいだろと声があがる。
「そーよ無理に決まってるわ!第一この崖よこの崖!ホテルに辿り着く前に転落死よ!!」
イリーナ先生もやっぱり根は優しい人で、烏間先生と同じ意見。
「渚君、茅野さんすまないが…」
烏間先生が声をかけた時だった。
「いやまぁ…」
「崖だけなら楽勝だけどさ」
「いつもの訓練に比べたらね」
皆が軽々と、崖を登っていく。
「でも、未知のホテルで未知の敵と戦う訓練はしてないから、烏間先生難しいけどしっかり指揮を頼みますよ」
「おお!ふざけたマネした奴等に」
「キッチリ落とし前つけてやる」
磯貝君に続けて、木村君と寺坂君も意気込む。
「見ての通り彼等は只の生徒ではない。あなたの元には十五人の特殊部隊がいるんです…さぁ、時間はないですよ?」
「…注目!!目標山頂ホテル最上階、隠密潜入から奇襲への連続ミッション!!ハンドサインや連携については訓練のものをそのまま使う…いつもと違うのは標的のみ!3分でマップを叩き込め!!」
「一九五〇作戦、開始!!」
「「「おう!!」」」