第7章 克服の時間
ホテルに戻ってからは皆ぐったりした様子でテラスの椅子に座り、テーブルにうつ伏せになったりと、本当に疲れきった具合にしんどそうにしていた。
しかし半分くらいの子が普通にぐったりしているのに対して、もう半数は熱でも出ているんじゃないかというくらいにしんどそうにしている。
それに気づいて、異様にしんどそうにしている前原君に駆け寄ってみる。
『前原君…なんか、体の調子おかしそうじゃない?どう見てもただ疲れてるだけじゃないよ、それ』
「白石…?悪い、ちょっと熱いだけなんだが……っ」
『前原君!?』
私の方を向いたかと思えば、立ち上がろうとしてフラリと寄りかかってくる。
自分よりもだいぶ身長の高い前原君だけど、それを支えられるくらいの力はある。
しかし問題はそこではない。
『熱いって……!酷い熱!烏間先生、これ、多分前原君だけじゃない!何人も多分熱が出てます!!』
体を支えただけでも伝わる程の熱。
周りを見れば、他の子達も倒れていたり誰かに支えられていたり…岡島君なんて、酷い鼻血まで出している。
量が、おかしい。
こんなに集団的に感染するようなもの…それもうちのクラスの子だけを狙ったようなもの。
人数が絞られていて感染が拡大していないのを見ると、経口感染だろうか。
「フロント!この島に病院は!?」
「え、いや……なにぶん小さな島なので、小さな診療所はありますが当直医は夜になるとよその島に帰ってしまう。船は明日十時にならないと…」
「くっ…!」
前原君をホテルの中に運んで仰向けに寝かせてから、烏間先生の元に移動する。
『先生、これ多分ただの熱じゃなくて、誰かに何か盛られてます。私や他の何人かに症状が現れてないのを見ると、恐らく経口感染かと…私と一緒に映像編集をしてた岡島君や三村君まで倒れているのを見れば、ディナーよりも前に全員が同じものを口にした時』
「!!…白石さん、どこか病院に運ぶことは、できそうか?」
『病院…はい、横浜の方でよければすぐに扉を…』
非常事態ということですぐに覚悟を決めて、扉を作ろうとした時だった。
烏間先生の携帯に、非通知の番号から電話がかかってくる。
事態が事態なだけにタイミングもいい。
烏間先生に相槌をうって、烏間先生が電話をとった。
「やあ先生……可愛い生徒が随分苦しそうだねぇ………?」
男の、声…?