第7章 克服の時間
「ニュヤアアア!!?やめて!手が無いから顔も覆えないんです!!」
「ごめんごめん、じゃあとりあえず……そこで拾ったウミウシ、くっつけとくね〜」
「ニュヤーーー!!!!」
いいように殺せんせーで遊んでるカルマ君は、完全防御形態で片手で持てるボールサイズになった殺せんせーを持ち上げ、皆に呼びかける。
「あと誰か不潔なおっさん見つけてきて!これパンツの中にねじ込むから」
「助けてええええ!!?」
ある意味いじり放題だね、とカエデちゃんの声が聞こえる。
カルマ君なかなかいいセンスしてるなやっぱり、流石は太宰さん二号。
「とりあえず解散だ皆。上層部とこいつの処分法を検討する」
烏間先生がカルマ君から殺せんせーを取り上げて、巾着型のビニール袋に入れる。
「ヌルフフ 対先生物質のプールの中にでも封じこめますか?無駄ですよ……その場合はエネルギーの一部を爆散させて、さっきのように爆風で周囲を吹き飛ばしてしまいますから」
烏間先生は歯を食いしばってまた悔しそうにする。
やはり殺せんせーは一枚も二枚も上手だ。
先の事をどれだけ見越しているのやら。
「ですが、皆さんは誇って良い。世界中の軍隊でも先生をここまで追いこめなかった。ひとえにに皆さんの計画の素晴らしさです」
殺せんせーはやはり皆の暗殺を褒めていた。
私からしてみても、今までにないような大掛かりな暗殺…全員が協力した、手応えのある暗殺だった。
しかし、それが失敗という結果を突きつけるだけに、皆のショックは大きい。
それも、何だか物凄く疲弊しているように見える。
特にとどめを刺そうと弾を撃った千葉君と速水ちゃんは、律から何を聞いたのやら、誰よりも悔しそうな顔をしている。
「…白石さんは、今回先生にとどめは刺さなかったのですね?」
烏間先生が私のところに殺せんせーを連れてきて、殺せんせーに話しかけられる。
『まあ…でも今の様子を見ていれば、ある意味これでよかったのかもしれないなんて思っちゃいます。殺したい気持ちを持っているのと、殺すことを理解して覚悟を持つことは、全然違う事ですから』
「薄々先生も感じていました。というより、一目見た時からそうなんじゃないかと…貴女は、元々殺しをしていたんですね」
殺せんせーに苦笑いを向けて、私もホテルに歩き始める。
『今は、ただの中学生の白石蝶ですよ』