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第7章 克服の時間


「この形態になった先生はまさに無敵!水も対先生物質も、全てこの壁が弾き返します!」

まさに壁。
エネルギーを凝縮させるだなんていう発想は私にもなかった。
そんな風に、生に執着して、追い込まれた時に生き延びる術を見つけようとはしてこなかったから。

…もしかしたらこれは、私の壁にまつわる重大なヒントになるかもしれない。

「そんなっ、じゃあずっとその形態でいたら殺せないじゃん!」

「ところが、そう上手くはいきません」

矢田ちゃんの問に殺せんせーが丁寧に答える。

「このエネルギー結晶は、24時間ほどで自然崩壊します。その瞬間に先生は肉体を膨らませ、エネルギーを吸収して元の体に戻るわけです。裏を返せば結晶が崩壊するまでの24時間、先生は全く身動きが取れません」

自然崩壊…それもそうか、そんな高エネルギー体を保持し続けるだなんてこと、どう考えても無理なことだ。

「これは様々なリスクを伴います。最も恐れるのは、その間に高速ロケットに詰めこまれ、はるか遠くの宇宙空間に捨てられる事ですが……その点はぬかりなく調べ済みです!24時間以内にそれが可能なロケットは今世界のどこにも無い」

『成程、欠点を調べ尽くした状態で最終手段を使ったんですね…流石』

皆唖然とした顔になっていて、寺坂君が工具で殺せんせーの膜を破壊しようと叩くものの、ビクともしない。
挙句の果てには、中で殺せんせーが口笛を吹き始める始末。

『多分無理だよ寺坂君、さっき銃で撃ってもダメだったんだから…こういう時に中也さんでもいれば』

ポツリと漏らした声が烏間先生に届いていた。

「中原さんなら、これを破壊できるのか?」

『…断言は出来ません。けど、この膜は壁とよく似てる……中也さんになら、何度も何度も破壊されたことがあります』

私の返事にその場の全員がこちらを向く。

『でも、今横浜の方から中也さんは手が離せませんし、何よりここまで追い込んだのは他の誰でもない皆です。それを踏みにじるようなこと、私は勿論、あの人だって絶対にやりません』

まっすぐ目を見て言うと、烏間先生はそうだなと納得しつつもどこか悔しそうな表情を浮かべている。
しかし一番悔しいのは、実行に移したE組の皆だ。

カルマ君なんて殺せんせーに雑誌の拾い読みの写真なんて見せていびってるし……ん?
あれ、悔しがって……あれ?
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