第7章 克服の時間
『!烏間先生、イリーナ先生!早く確認に!』
「あ、ああ!白石さんはここに!」
烏間先生とイリーナ先生はチャペルの小屋があった方まで走っていき、皆に指示を出して辺りの海を警戒させる。
聞いた話では、夕食の前にドジで脱皮を使ってしまったらしいから、他にどんな手を使って来るかは分からない。
海から少しだけ離れたところまで近寄って様子を見れば、皆が一瞬で、何やら同じ方向に銃を向けるのが見えた。
それと一緒に、陽気な殺せんせーの声も……って、
『何で海の上から殺せんせーの声が……?泳げないんじゃなかったっけ?』
「これぞ先生の奥の手中の奥の手!完全防御形態!!」
「「「完全防御形態!!?」」」
どんな形態なのかはまだ見えていないけれど、かなり間抜けな姿であるということは皆の反応からして分かる。
しかししてやられた、まさか本当に、脱皮以外の奥の手を隠していただなんて。
試しに銃で殺せんせーの完全防御形態の頭と思われるところを、皆に当たらないようなコースを見つけて撃ってみる。
すると、少し遅れて何かにぶつかったような大きく高い音が響いてくる。
「え!?」
「うわあ、何だ!!?」
「ニュヤ!?いったいどこから実弾なんてものが……!白石さんですか!?」
皆も烏間先生も、私の方に顔を向ける。
当てた手応えはあったし、実弾なら殺せんせーの体内で溶けてしまうはず…何かに、それこそ私の壁のようなものに、弾かれた?
『!殺せんせー、今、弾当てましたよね!実弾撃ったのに、何かで弾きました?』
大きな声を出して聞けば、皆こちらに向かってゆっくりと戻ってくる。
「いや、何であの距離で銃撃って当てれんだよ!?白石の方にびっくりだよ!」
「しかも誰にもかすってないし…」
「……これが完全防御形態」
潮田君に見せられた殺せんせーの完全防御形態…それは、予想の遥か斜め上をいく姿だった。
皮膚……というか顔をオレンジ色に変色させて小さく収縮し、葛餅のように透明の分厚い膜の中に頭をすっぽりと入れている。
しかし表面の透明のコーティングは葛餅とはかけ離れてとても固くなっていて、実弾が弾かれるレベルの強度を肌で感じ取らせた。
「外側の部分は高密度に凝縮されたエネルギーの結晶体です。肉体を思いっきり小さく縮め、その分余分になったエネルギーで、肉体の周りをギッチリ固める」