第7章 克服の時間
カルマ君とカエデちゃん、原ちゃん、竹林君が外に出てきて、モーターボートに乗る。
陸の方にはイリーナ先生も戻ってきて、私もいることに気づいたのかこちら側の二方向にあるモーターボートの上から、カルマ君もカエデちゃんも大きく手を振ってきた。
あれは、そろそろ作戦を決行するという合図だ…と思う。
普通にはしゃいでいるだけかもしれないのだけれど。
私も手を大きく振り返して、時間的にはもう映像が終わっている頃だろうと確認し、暗殺を見届けるために目を凝らす。
カエデちゃんの携帯がパッと明るくなるのが見え、律がタイマーを開始したのだと分かった。
つまり、チャペルの中は今満潮によって海水が染み込んでいて、殺せんせーは動きが鈍っている状態。
そして、タイマーが開始されたという事は、テストで触手を破壊する権限を得た七人が、触手を同時に破壊したということだ。
『!壊れたっ』
モーターボートに乗っている四人がそれぞれの方向に発進して、水上チャペルの小屋の壁を壊す。
勿論あの壁はE組皆で作り替えたもの。
壁がなくなって、今度は急激に環境を変化させるため、殺せんせーを囲むように皆がフライボードを乗りこなし、そのまま上昇して全員で肩を組み、強力な水圧の檻を作り上げる。
「裏山でのクライミングで鍛えたバランス力がここまで影響しているとは…」
「蝶の木渡りを見て思いついたんだっけ、クライミング訓練」
『え、そうだったんですか?……って、烏間先生に見られてた!?』
毎朝見てるぞと言われて、それに気づいていなくて恥ずかしくなってきた。
普通のフリーランニングをさせるのはまだ少し危険だと思って、先にバランス感覚を養おうとしたんだとか。
『も、もう…あ、二人が出てきましたよ!とどめです!』
千葉君と速水ちゃんが水面に現れるのを確認し、二人に伝えるも、暗いのと遠いのとでよく見えないといった様子。
フライボードの水圧のせいで発砲音も聞こえない。
匂いに敏感な殺せんせーは、あの二人と私は山にいると思ってる。
だからそちらに警戒を割いている……これさえ決まれば、殺せんせーを殺せる可能性は、かなり高い。
千葉君と速水ちゃんがスコープから顔を離したのを確認し、その瞬間、稲妻のような眩しい光が海の上を迸る。
爆風が吹き荒れ、咄嗟に烏間先生とイリーナ先生の目の前にも壁を張った。
『…殺った?』