第7章 克服の時間
「そうか、今からなんだな。海の上で決行するんだろ?ちゃんと離れて、烏間さんかあの女教師んところについとけよ。何かあったら助けてくれっから」
『はぁい…今日の作戦、成功しても失敗しても、その後忙しくなりそうだから先に電話したの。烏間先生の手伝いとかした方がいいだろうし、状況にもよるけど後始末とか手続きとか色々あるだろうから』
私の考えを伝えると、成程なと中也さんも納得してくれる。
「とか言いつつ、もう寂しくなってきたからなんじゃねえのか?」
『そ、そんな早くないです!!』
「プッ、どうだか…まあ元気そうで良かった」
ご飯はちゃんと食べたか、水分補給はちゃんとしてないか、体調がおかしいのに無理してないか。
いつもの心配を電話で確認されて、ちゃんとしてますと丁寧に返事をする。
「ならいい。あ、あとお前、もし何かあったらいつでも俺んところに来てくれて構わねえからな。つか何かあったら絶対来い」
『そんな心配しなくっても大丈夫ですって。私ですよ?何かあったらもう能力使ってでも勝ち抜くって決めてますし、異能力者が来たとしても私の能力なら大概大丈夫です。組合も拠点はもう無いんですし』
そこまで言うと、中也さんの様子がが何だかおかしくなる。
突然、黙り込んでしまった。
『中也さん…?』
「あ?…あ、ああ……何でもねえ。それよりお前、探偵社の誰かに聞いてっか?姐さんのとこにいた…何だったか?あのちっせえ餓鬼の事だが」
鏡花ちゃん?と聞き返したらそう、それだと返される。
鏡花ちゃんに何かあったの?
まさかマフィアに連れ戻された?それとも、誰かに何かされた?
「言っていいのか分からねえけど、一応教えとくぞ。あの餓鬼が、数時間前に軍警に引き渡されたらしい。組合の奴らに上手く操作されて、殺しの罪でだ。異能力者だって事もバレてる」
『軍警に!?それに殺しってなんで』
「分からねえ。が、まあ探偵社の事だ。どうせまた太宰の野郎が何か考えてんだろ…とりあえず教えはしたが、相手は軍警だ。お前も今は探偵社員だし、その餓鬼のところには移動するな。いいな」
中也さんは冷たい事を言い放つように聞こえもするが、これでもまだ私の後輩の事だからか情が少し入っている方だ。
元々優しくていい人であるというのに変わりはないけれど、他人に優しくするような、ただ優しいだけの人ではないのだから。