第7章 克服の時間
『うえ、!?なんかイリーナ先生まで甘やかし移ってません!?』
「何が甘やかしよ、蝶限定に決まってるでしょこんなもの。同僚みたいなもんなんだから」
よくよく考えてみればそんな感じか、と一人どこかで納得した。
烏間先生も一人のプロとして接しているとかなんとか言っていた気がするし、イリーナ先生にもそんな風に言ってもらえるだなんて嬉しい限りだ。
『そ、うですか…あ、勿論嬉しいですけど、私奢っていただかなくても大丈夫なくらいにはお金もってきてますよ?』
「いいのよ、子供は黙って大人に甘やかされときなさい!」
『なんかイリーナ先生まで中也さんみたいになってる』
あんな男と一緒にしないでくれる!?と、言った瞬間に返ってきた。
昨日の電話とやらで折り合いでも悪かったのだろうか。
……ああ、まあ中也さんもイリーナ先生も、一言カチンときたら言い返し合いになりそうだもんな。
すぐに言い合いをしている光景が頭に浮かんで、また苦笑いを浮かべた。
修学旅行の時みたく、判別行動で殺せんせーと一緒に遊ぶ。
一つの班が暗殺をしながら殺せんせーと遊んで気を引いて、他の班がその間、着々と暗殺の準備を進める。
私は海の方には行きたくないのを皆理解してくれていて、山の方の狙撃スポット選びと、後は岡島君と三村君と一緒に映像編集の手伝いだ。
イリーナ先生とお茶をするのは、明日ゆっくりとさせてもらう事にした。
今は千葉君、速水ちゃん、岡島君、菅谷君と山の中を歩いている。
「殺せんせーは?」
「今、三班と一緒に海底洞窟巡りに行ってる。こっちの状況は、絶対に見えないよ」
『私は本番でこっちを警戒させるために、二人と一緒にここに服だけ置いていけばいいんだよね?』
千葉君と速水ちゃんにコクリと頷かれて、了解、と上着のチャックだけ全開にした。
「殺せんせーがこっち見えないって事は…」
「今なら射撃スポット選び放題ね」
『サクッと決めちゃお』
スナイパーライフルを三本設置して、重ね着していた服のインナーを脱いで、菅谷君の作った木のダミー人形に着せる。
「白石が少し緩和してるようにも見えなくないが…シブいな、あの三人」
「ああ、最早仕事人の風格だ。つうか一人本職混じってるしな」
ダミー人形を作り終えて、岡島君と私は三村に合流しに、すぐに水上チャペルへと向かった。