第7章 克服の時間
『烏間先生!』
ホテルでは皆がトロピカルドリンクを飲んでいて、すぐに烏間先生は見つかった。
「白石さん!もう終わったのか?」
『はい!全力で飛ばして来ましたから!もう大丈夫ですよ』
「そうか、良かった。これなら皆と同じだけここを満喫出来そうだな…サービスのトロピカルドリンクらしい。白石さんも飲んできたらどうだ?」
『あー…私ホテルの飲み物とかちょっと苦手で。中也さんいないと飲むのに抵抗あるっていうか』
困り眉になって笑えば、烏間先生は驚いていた。
「警戒心というのもやはり見事なものだな…俺が飲んでみたところは大丈夫だったと思うが?」
『問題がないならそれでいいんですけど、何かあったらそれこそ中也さんいないと、私死んじゃうかもしれませんから』
もしも彼の元に移動出来ないような状態にでもなったりしたら、それこそ私が死ぬかもしれない。
ただでさえ先程怪しいホテルを見つけたくらいだ。
誰が何を、どう仕込んでいるのかがはっきりしていない以上は、迂闊に口にはしない方がいい。
「それがあったな。確かに警戒心も強くはなるか…船上レストランでのディナーは食べられそうか?」
『はい、そこはもうちゃんと調べをつけてありますので。モニター用の小型カメラも仕掛けてきましたし、大丈夫ですよ』
携帯をチラリと取り出せば、烏間先生も今度は苦笑いになった。
『中也さんが私よりも先に全部調べあげちゃってて、あとはその情報以外に変な動きが混ざったり、人が変わったりしていないかを見るだけです』
シェフが体調不良などで来れなかった場合の代わりのシェフまで調べはつけられていた。
恐るべし中也さん、昼間拠点にこもってる間にそんなことまでしてただなんて。
「流石というか、用意周到だというか。それなら大丈夫そうだな」
「あら、蝶じゃない。戻ってきてたの?」
『!イリーナ先生!』
イリーナ先生が私が戻っているのに気づいてか、声をかけてくれた。
「ガキ共も今はのんびりしてるわ…あんた、海に入らないんなら、暇な時間にここいらの店でお茶でもしない?奢ったげる」
イリーナ先生の声が聞こえたのか、トロピカルドリンクを口にしていた子が一斉にこちらを向いて、あのビッチ先生が!?と驚いている。
「失礼ね!?あんたらは外でキャッキャとはしゃいでおけばいいわ!その間蝶は私が独り占めするんだから」