第7章 克服の時間
「成程、では頼もう…だが、白石さんの時間をそこまで使わせてもらうのも申し訳ない。荷物は俺が預かっておくから、なんなら今から行ってきてくれても」
『え、いいんですか!?』
烏間先生からの予期せぬはからいに、思わず声を大きくした。
皆がホテルにいるうちになら、能力使い放題で一気に散策を終えることが出来る。
私の目的は、いつでもそこに移動が出来るよう見る事だけだから。
「あ、ああ…荷物はそれだけでいいんだろう?」
『はい!あ、でもトレーニング代わりにちょっと重入れてあるんで、烏間先生ホテルの人には預けられないかもなんですが…』
「「「なんで荷物で筋トレしてんだよ!!?」」」
人が一人入っているんじゃないかというくらいの重は入れてきた。
ガタイのいい大人を素手で投げ飛ばすのにも、これくらいを目安に力を入れなければならない。
『だってほら、何かあったら大変でしょ?多分重よりも荷物の方が少ないよ』
心配症、なんて健気な子、などと感動した様子の子がちらほらいるが、まあ半分は私の趣味だ。
『なので出来るだけ転がして行くようにお願いしま…あ』
「ぐっ…!?」
烏間先生に手渡すと、想像していない重さだったのか、先生の表情が険しくなる。
しかし荷物を地面に落としてはいないあたり、烏間先生なら慣れれば問題なさそうだ。
『大丈夫そうです?』
「…ああ、俺はまあ何とか。しかしこれを持ってきたとは…確かにホテルの方には持たせられそうにない」
「「「どんだけ重いんだよ!!!」」」
烏間先生にニコリと微笑んでから、荷物を任せて走って皆から離れていった。
皆から目視さえされなきゃ、テレポートし放題だからね。
散策しているうちに、一箇所だけ怪しい建物が見つかり、携帯で検索をかけて少しだけハッキング紛いのことをしてみれば、中々に怪しい使われ方のしている場所だった。
裏取り引きの密談なんかに使われることも多いようで、建物の構造を見てみても、テロなんかを起こせないような、テレビ局と似た構造をしている。
エレベーターを使えない場合は、それぞれのフロアを全て階段で登るしか移動手段がなく、それも階段は全てのフロアでバラバラの位置に設置されている。
E組に何も厄介事が飛び火してこないのを祈るのみ…ホテル側から察知されないように能力も駆使して接続を切り、烏間先生の元へ戻った。