第7章 克服の時間
「にゅやぁ……船はヤバい、船はマジでヤバい」
修学旅行の時よりも乗り物酔いが酷そうな殺せんせー。
アロハシャツや麦わら帽子と、南の島を満喫する気満々の格好ではあるのだが、船は相当堪えるようで、柵にもたれかかってグッタリとしている。
そこに倉橋ちゃんがナイフを振りかざしに行っているものの、当たる気配はやはり無い。
「先生頭の中身が全部まとめて飛び出そうです…」
『殺せんせーの頭の中身ってどうなってるんだろ?』
「蝶ちゃん、それ思ったけど考えんの怖いからやめとかない?」
カルマ君が口を引き攣らて苦笑いになる。
単純に気になっただけなんだけどな…。
「!起きて起きて殺せんせー!見えてきたよ!」
倉橋ちゃんの声を合図に、前原君が続けて言う。
「東京から六時間!殺せんせーを殺す場所だぜ!」
カルマ君も私も遠くを見て、そこが見える距離にあるのが分かった。
「「「島だー!!!!」」」
船から降りる時も結局カルマ君のお言葉に甘えて、手を引いて歩いてもらった。
乗る時は見られていなかったけど今回は皆それを見ていて、冷やかしの目を向ける子達がちらほら…
「何だ何だぁカルマ君よ、略奪愛かね」
「中原さんいなかったら蝶ちゃん独り占めだもんねぇ?」
『いや待って皆、略奪愛も何もまだそこまでいってないから』
ホテルまでの道のりの中、カルマ君は否定もせず煽りもせずと言った具合に楽しそうにしている。
「えー、略奪愛かぁ…蝶ちゃん中也さんにベタ惚れだし、あのセコム強すぎるから遠慮かな」
『なんで私が振られた風になってるのよ!?だいたいセコムって何!!』
ああ、知らなかったの?と言って、セコムという名のセキュリティシステムについてカルマ君が事細かに説明してくれる。
『へえ、でも家にはいらないかな』
「だろうね」
「「「あんたら二人して強すぎるんだよ」」」
二人というのは私と中也さんの事だろうか。
皆から一斉に突っ込まれた。
『あ、烏間先生。私ホテルに荷物置いたら、すぐにこの辺一帯の地理感覚頭に叩き込みに行きますね?何かあったら連絡下さい』
「え、蝶ちゃん何でそんな事しに行くの!?折角のリゾートだよ!?」
カエデちゃんが慌てて言う。
『大丈夫だよ、すぐに終わらせて戻ってくるから。念のためだよ念のため』
今回は下見をしていなかったから。