第7章 克服の時間
「……蝶ちゃん、大丈夫だからここは渡ろ?」
『ふえ!?な、なに言ってるのカルマ君、すぐ渡るしこんなとこ!!』
フェリーの乗り場に到着して前から順に皆乗っていく…のだけれど、フェリーに渡るところより、その周りに見える海が気になって気になって仕方がない。
カルマ君にはついそんな風に大口叩いてしまったものの、ただのプールなんかじゃなくて相手は海。
「すぐ渡るって、そんなあからさまに怖がっててよくそんなこと言えるよね。どっからどう見ても震えてっし」
『武者震いです!!』
「何、戦いにでも行くつもり?……もう」
後ろに残ってるのはカルマ君と烏間先生だけで、焦って余計に変な事ばかり口にする私にカルマ君も呆れたような声を出す。
『だ、だだ大丈夫だから……っ!?』
しかし、私の前を歩いて行ってしまったと思えば、腕を引っ張られた。
少しよろめいてカルマ君にしがみついてしまい、自分の足元を見ると視界に海が入る。
足がすくみそうになるのを堪えてカルマ君の服を掴んでいると、中也さんがしてくれるみたいに片手で頭を撫でてくれた。
「掴まってていいから…一緒に行こ。俺がついてる、それなら怖くないでしょ」
『!…うん』
早速情けないところを見せてしまったのだけれど、カルマ君のおかげで何とか足を進めることが出来た。
カルマ君がいてくれて本当によかった、横浜以外で他の人の目があるところでテレポートなんて出来ないし。
フェリーに乗って中に入ると、誰も室内にはおらず、全員が甲板に出ているのが見える。
烏間先生も乗船してすぐにフェリーは出航し、数年ぶりに感じる船の揺れに少し不安になりもする。
「蝶ちゃん船に乗ったことない?」
『う、ううん。久しぶりすぎてちょっと慣れないだけ…カルマ君、いいよ?外に行ってもらっても。私、もう大丈夫だし』
「うーん…蝶ちゃんと一緒に外行きたいな、俺。端の方に行かなかったら心配ないし、一緒に行かない?」
カルマ君の提案に驚くものの、彼の方から私に来て欲しいだなんて言われて嬉しくならないはずがない。
一緒にいてくれるんなら、大丈夫…一人じゃないなら、大丈夫。
『……うん、行く!』
「あ、よかった。写真も撮らせてね〜、俺中也さんに蝶ちゃんの写真送ってくれって頼まれてるから」
『なんて事頼んでんのよあの人は!!?…って、撮らないでよね!?』