第7章 克服の時間
安吾さんとももうちょっと話していたかったけれど、あちらもまだ会ったばかりで交渉があって、私もそろそろバスの時間があるので、椚ヶ丘に移動する。
校舎の山の麓にバスが止まっていて、そこに皆も乗っていて合流した。
「おはよう蝶ちゃん!今からバス以外にも色々乗り継いで行くんだって!」
『あ、おはようカエデちゃん。やっぱり沖縄…それも離れの島にもなると遠そうだね』
「そうだね。移動も楽しみだけど、私はやっぱりホテルのデザートが楽しみだよ!」
『同志がここに…!流石カエデちゃん!』
飛行機や船の類のものに乗るのはこっちに戻ってきてから初めてのことで、若干怖い気持ちもある。
海が見えるから…自分の周りが海だから。
それもそんなに長い距離を、ほとんど海を渡って移動するのだ。
ここ最近は扉を作れば移動出来るようになっていたからそんな交通手段を使う必要もなかったし、前に海のところにいた時は国木田さんがいてくれたから…
カエデちゃんの後ろの席に座って、先に決まっていたとおりに…何故そうなったのかは知らないけれど、カルマ君が隣の席に座る。
「デザートって、蝶ちゃんは昨日たらふく食べたんじゃなかったの?」
『昨日の話でしょそれは。デザートならいくらでも食べれるし…………って、何でカルマ君が知ってるのよ!!?』
普通に受け答えしてたけど、何か違和感があると思った。
昨日私が中也さんにいっぱい食べさせられてるのを見たのって、数人だけだったはずなのに。
「そんなの蝶ちゃんがここに合流する前に、とっくに岡島が喋り歩いてたよ?」
『そこか…っ、すっごい予想ついた』
どこまで聞いたのかと聞く前に、発言から何から全部事細かに言って騒いでたよと教えられる。
一番後ろの座席に座っているのに心なしか視線が集まっている理由にも納得がいった。
「ま、まあ白石さんと中原さんがああなのはもう皆分かってると思うから…怒るならどうぞ、実行犯の岡島君を」
カエデちゃんの隣に座る潮田君に宥められるように言われて、余計に恥ずかしくなった。
言えない、夜も朝も散々キスしてばっかりだっただなんて。
『もう本当なんなのあの人、開き直ったとか言い始めてからずっと人前でもあんなことばっかりするように…!!な、何でもないから!そんな顔しないでよ二人共!?』
潮田君とカエデちゃんに生暖かい目線を送られた。