第7章 克服の時間
たくさんキスして幸せな気持ちで眠りについて、遂に沖縄の離島に行く日がやってきた。
いつにも増して私を送り出すのを渋る中也さんだったけど、出る前にもう一回キスをされて、おでこにも最後にキスを落としてから、行ってこいと送り出された。
探偵社の方にも顔を出しに行って、紅葉さんにも今から南の島に行ってくるのだと伝えた。
皆私に楽しんでこいと言ってくれて、それと一緒に私の性格を理解しているからか、何かあったらすぐに連絡を入れるからとも言ってくれた。
それが何よりも嬉しくて、行ってきますと笑顔で出てきた。
修学旅行の時みたいにまた太宰さんとは出会えなかったので、今度は太宰さんのところに扉を作って移動する。
『太宰さー……ん…?』
「えっ?」
「おお!!」
しかし行き着いた先は誰かの車の中。
あれ、何ここ、太宰さん車に乗ってるとか珍しい…じゃなくて。
『え、と…だ、太宰さんにも挨拶してから行こうと……って、あれ?さっきの声って』
私が来たのにテンションをあげたのは勿論太宰さん。
しかし太宰さんは助手席に座っていて、私は後部座席に到着した。
残るもう一人の声は運転席の人物になるのだが、その声に私は聞き覚えがある。
「あ、そういえば再会するのは今回が初めてだね君達?」
「ちょ、とりあえず一回車止めますよ!」
車を近くの駐車場に止めて、運転をしていた懐かしい人が私の方を振り向いた。
「まさか、こんなタイミングでまたお会い出来るとは…少し大きくなりましたね」
『少しは余計です!…でも、本当にお久しぶりです、安吾さん!』
「蝶ちゃん、心なしかさっきの私への時よりも嬉しそうじゃないかい?」
太宰さんの呟きは知らないふりをして、安吾さんに再会の挨拶をする。
太宰さん達の間に何があったのかは私も知っているけれど、私にはただただ良くしてくれていた人だ、私は嫌いになったわけではない。
太宰さんと、これからクラスで南の島に行くのだということを説明した。
すると安吾さんは何だか雰囲気を柔らかくする。
「そうですか、学校に。友達も出来たのなら何よりです…本当に良かった」
「しかももっと可愛く育ってるでしょう?この子。わざわざ私に挨拶しに会いにまで来てくれちゃってさ」
やけに私にというところを強調する太宰さんにクスリとして、手短に挨拶をすませてもう出発することにした。