第6章 あたたかい場所
私の髪を乾かしてから中也さんもお風呂に入り、中也さんが上がってきて予定通りにプリンを食べた。
中也さんは私には髪の手入れにうるさいくせに、自分はタオルドライしかしていない。
『…』
「なんだよ、プリン食ってた時はあんなに嬉しそうにしてたのにんな不機嫌そうにして」
『中也さん何で今日、自分にはドライヤー使ってないの』
風邪をひくから、髪が傷むからと言ったのに、自分は今日に限ってドライヤーを使ってはいないじゃないか。
「…今日はお前んとこに早く戻らねえとなと思ってな。ちょっとでも長くいてえじゃねえか」
予想外の返しに何も言えなくなった。
え、何この人、どれだけ私基準なの、分かってたけどさ。
『ち、中也さんの髪がちょっと傷んじゃうよ?』
「野郎の髪なんか気にしてどうすんだよ、一日くらい放っとけ」
『中也さんの髪、綺麗で好きなのに…あ、そういえば私、明日から数日間愛妻弁当作れない……?』
ふと思い出したようにして言えば、中也さんがこちらをバッと振り向いた。
「それはもう言うんじゃねえ、俺もう全部分かってやっと落ち着いてんだからよ!!」
『え、でも中也さんに私のご飯食べてもらえな「言うんじゃねえっ、言ってくれんじゃねえ!!」は、はあ…』
これ以上言ったら泣くぞというような顔をされて、大人しくするしかなかった。
本当、どれだけ私に執着してるんだか。
『あ、でもデザートだけ作り置きしときましたからね!私が帰るくらいまでにはもつように』
「蝶…お前ってやつは……っ」
『え、ちょ、なんでいきなりそんな感極まって…っ!?』
親バカモードに本格的にスイッチ入ったかと思ったのに、中也さんがすぐに私の元に来て頭を撫で始めた。
けどそれがなんだか無性に恥ずかしくなって、すぐに中也さんから離れて少し距離をとる。
「蝶?」
『や、あのっ…な、何でもないですから!!』
「あ、待ておまっ…って、やっぱり実はお前馬鹿だろ?」
中也さんを振り切って入った先は、中也さんのベッドの布団の中。
もう後は寝るだけだったからそこに入ったのだけれど、中也さんはまた私を馬鹿と言う。
『ば、馬鹿じゃなっ…ひゃああ!?何してっ!!?』
ガバッと思いっきり布団を捲られて、獲物を追い詰めたように嬉しそうな顔をしている中也さんが、すぐに私の身体を動けないように上から覆い被さった。