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第6章 あたたかい場所


「うるせえ…手前なら分かってんだろ、裏の人間が何を考えんのかって事くらい。一般人ならともかく、蝶には才能も実力も経験もある。今だってちょくちょくポートマフィアを助けてくれたりもしてるくれえだ」

「で、そんな事ばっかりで頭埋め尽くしてたのに開き直ったのね。蝶を泣かせて」

「ぐっ…!!……クソッ、手前が蝶の知り合いじゃなけりゃこんなもん…」

簡単に言えばこの女の言うように、俺が見て見ぬふりをし続けていただけだ。
認めてしまえばなんて単純な事だったのだろう。

俺が蝶をそういう意味で好きで、蝶だって俺がそういう意味で好きだという事。
ついこの前あんだけ泣かして、やっと分かった…いや、認めた。

樋口に言われた通りに向き合っただけだ。
後はそれだけで、良かったんだ。
最初から二人共、ただ本当に同じ意味で好き合っていただけだったのだから。

「蝶の方はあの調子で気付いてそうにないけどね?あんたが散々見て見ぬふりしてきてたせいで、あんたがあんだけ分かりやすい告白したって全っ然伝わってなかったし」

「ツケが回ってきたってもう言えばいいだろ!?分かってるから変な所で気遣ってんじゃねえよ!!」

「本当、そんだけ生きてきててなんであんなに馬鹿な……ああ、それもこれもあんたのまいた種だったわね。ツケが回ってきた可哀想な中原中也」

言い返すことも出来やしない。
あいつが俺に初めてキスをしてきた時に、この女から深い方を教わったのだと嘘を吐いたのだって、全て俺を思っての事。

恐らく誰かにどこかの段階で聞いたことがあるというくらいで、実際にしたのは本当に初めてだったのだろう。

そういう意味でも、あいつの初めては本当に本当に大切なものだ。

蝶が誰ともそこまでの関係にいったことがないことだなんて、身体やあいつ自身の反応を見ればすぐ分かる。

俺からして見りゃ本当に嬉しい以外の何物でもないのだが、蝶が俺と出会う前に誰かとそうなっていようが気にするだなんてことはありえねえ。

……まあ、それを気遣って俺にそういう嘘をつくあたりが余計に可愛らしいんだが。

「んで、そんだけ好きで蝶のことわかってんなら大丈夫でしょうけど、ちゃんと甘やかしてやってよね。あんたに隠し事して芝居で誤魔化してるってだけで相当精神やられてんだからあの子」

「わぁってるよ…礼は言っとく。後、これからも蝶を頼む」
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