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第6章 あたたかい場所


「何で死ねないのかは、蝶も分かってないのよね?…あんた、それで自分が死ぬ時はどうすんのよ」

「俺が死ぬ時は、白石蝶が死ぬ時だ。死ぬまでに誰か後継人でもいればいいんだが、それはそれで蝶を横取りされんのも俺が嫌だしな。白石蝶を殺してあいつがまた生まれるためのプレゼントでもくれてやるさ」

「本当、そんだけの事情なんか知らなかったら、あんたがどれだけ蝶の事を好いてんのかなんて想像もつかないわ…そんな所まで考えてるだなんて、あんたまだ私と二つしか変わらないわよね?」

「こんなもん、それこそ十四の頃に蝶の目の前で堂々と公言してやったさ。そうでもして納得させねえと、今みてえに育ってねえよ」

どうしてあんなに蝶に惹かれていたのだろうか。
俺の傷を治した、零とも蝶とも違うあの女のせいもあるのだろうが、蝶に…“あいつ自身”に、心を掴まれて手放せなかった。
手放したく、なかった。

蝶本人にだって勿論聞いた。
誰かを助けた事がないか、道端で誰かの傷を治したことがないか。

それでも蝶は、本当に知らないといった様子で首を横に振ったのだ。
同じだと思っていた零とあの女は、これで別物であるとはっきり判明した。

あの女はやはり、蝶でも零でもない別のものなのだ。

「まあ、これであの子があんたの事をあんなに好いてんのも納得よ…で、沖縄から帰ったらハッキリさせるって、遂に告白するとでも決めたの?あれだけこっちで否定しておきながら」

「……いいだろ、もう開き直ってんだからよ。あいつが…蝶の事さえハッキリすりゃ、いつだって俺は実行出来てたんだよ」

「自分があの子を恋愛対象として見てるってのに見て見ぬふりしてきた奴の台詞とは思えないわね」

めくるめく俺の情けない無駄な思い出が頭の中を埋め尽くした。
今思えば本当に馬鹿な事をし続けていた。
再会してからあいつが改まって俺に好きだなんて言い始めるようになっていた時に、意地を張らずに素直にそうだと認めてしまっていればよかったものを。

「ぐ、っ…ば、バレてやがる………それで勘違いだったらいけねえだろうが!?」

「でもそれで、結局どこで自覚したのよ?あんたが蝶の事をそう見てるって自覚したのは、まあ結構すぐだったんでしょうけど」

「……自覚っつうか、あいつを何回か泣かせちまってな。流石に見て見ぬふりも出来なくなったんだよ」

結局蝶には敵わねえ。
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