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第6章 あたたかい場所


「そうだ、さっきも説明したとおり」

次々と、一つ一つを受け止めるように、確認するように繰り返されていく。

「蝶は元々殺しをしてた…けどそれは、ポートマフィアにいた頃の事を指しているんじゃなくて、主に零だった頃にしてきていた事を本人は指している…それでいいの?」

「ああ。ポートマフィアに入ってから暫くのうちも勿論殺しはしていたが、色々あって俺がやめさせた。無理矢理あいつの仕事を全部取っていって、殺しだけはさせねえようにした…だから、間接的に零を殺したって事になってる」

殺し屋の零を殺して、白石蝶に生を与えた…そう蝶は表現していた。
零なんてものはただの通り名であって、あいつの名前なんかじゃあない。

“最初の名前”は確かそれに近いものだったはずだと蝶は言っていたが、“そいつ”ももう、とっくの昔に死んでいる。

「蝶が殺しをやめたから、零と言う名の殺し屋は死んだ。…蝶自身が零本人で、零そのものが蝶だったから」

「そういう事だ…だがまあ、あいつの前で零を名前だとは言ってやらねえでやってくれ。ただの通り名だ、蝶の名前じゃねえ」

蝶は零と呼ばれるのを嫌う。
この地球上において零が名前だなどと言われることは、蝶からしてみればそれこそ記憶を消したいくらいに悲痛な思いをするような行為だ。

「通り名、ね…で、一番頭が混乱してんのがここなんだけど。………蝶が零として活動していた時期は、普通に考えてあの子が物心ついたばかりのような歳。だけどロヴロ先生は美しい女性だと言っていた」

ロヴロさんといえば、一度だけ同じ任務に就いたことがある。
確か酒の趣味が分かる人だったということは覚えている。

「ああ…あいつは一度……いや、言われてねえだけで恐らく何回も、あいつを監禁してた奴に“本当に殺されてる”」

「…殺されてから………六歳程の子供の姿に戻って、生まれ変わる?」

「そう。だから俺が蝶を拾った時、あいつは既に一回殺されたすぐ後だったって事だ」

事実を確認するだけの行為だが、それでも相手の頭が相当なショックを受けているという事は電話越しにも痛いくらいに伝わってくる。

蝶が俺に度々言おうとする自己犠牲的な発言は、あの忌々しい実験施設での生活のため。

あいつは何回死んでも、いくら殺されても、子供の姿になって生き返る。
白石蝶は、死なない身体……否、“死ねない身体”なのだ。
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